レバノンの停電問題と権力の闇を告発する、愛と復讐の宴がはじまる

中東の小国レバノンが、数十年間に及ぶ電力危機とこれに端を発する政情不安に見舞われてきたことをご存知だろうか。国から配給される電力は1日わずか数時間のため、国民は独自の解決策に頼らざるをえない。状況は2020年の金融破綻や昨今のイスラエルによるレバノン侵攻によって悪化の一途をたどるばかりだ。

レバノン内戦下(1975–90)に生まれたターニヤ・アル゠フーリーと歴史家の夫 ズィヤード・アブー・リーシュは、ある停電の夜、この問題の根源を解明するプロジェクトに乗り出した。本作は「謎解きをするには最高のカップル」と自ら語る二人が見つけた事実を、観客参加型のレクチャー・パフォーマンスで告発していくものだ。

ある祝いの夕べに誘われる参加者たち。供されるのは、複数の国で収集した公文書や記録文書の数々だ。これまで隠蔽されてきた資料を含むこれらは、レバノンの電力インフラと旧宗主国や欧米間の覇権争い、マネーゲームをめぐる歴史の闇の痕跡。ひとつずつ手にとって見ていくことで、観客自身もこの歴史の継承者となっていく。展覧会では、パフォーマンス上演後の空間をサウンドインスタレーションとして公開する。