鈴木は、学生時代から「生活の中のカオスと規律」をテーマに制作をおこなっています。主要なモチーフとなってきたのは、障害を抱える兄と彼にまつわるもの・ことで、日常的に体験する感覚と社会とのズレ、そこからうまれるさまざまな思考が折り重なり、版画という技法、そしてその支持体である紙との対話をとおして、作家の表現はうみだされてきました。
この春から制作の基盤を横須賀市の芸術家村に移した作家は、これまでのテーマを踏襲しつつ、新たな視点で、新たな素材と表現に取り組んでいます。住居の近くで採集した草花からつくられる「紙」が織りなすかたちと色は、自然のなかで繰り返される生命と、作家自身の造形行為の「反復」を象徴しています。
今回の展示は、これまでの制作で来し方をふりかえり、新作で開拓しつつある新たな境地を示す意欲的な試みとなりそうです。この機会にぜひごらんください。

--「PROJECT dnF」は、一般財団法人福沢一郎記念美術財団が、福沢一郎とゆかりのある多摩美術大学と女子美術大学の優秀な学生に1996年から贈与している「福沢一郎賞」の受賞者に、福沢一郎の展示スペース、つまり福沢一郎の使用していたアトリエを展示スペースとして提供し、制作発表の機会としていただく活動です。