動物は古来より人の暮らしと深く関わり、時には信仰の対象となり、またある時には科学的な興味の対象となりました。動物は古くから、人の手によって制作されるモノのモチーフにも用いられ、古墳時代の出土物には、馬や猿、犬などの動物を形作った埴輪があり、飛鳥時代に制作された、現存日本最古の刺繍遺品として知られる《天寿国曼荼羅繍帳てんじゅこくまんだらしゅうちょう》には亀や鳳凰の刺繍が確認できます。また、平安時代末期から鎌倉時代初期に制作された国宝《鳥獣戯画》には、生き生きとした兎や蛙が描かれており、これは今なお人気を博しています。安土桃山時代から江戸時代にかけては、虎の絵が様々な絵師によって描かれていますが、生きた虎を目にする機会がなかった彼らは、中国から伝わった虎の絵をもとに、あるいは身近にいた猫を虎に重ねて虎の絵を描いていました。しかし、江戸時代後半になると、博物学が流行し、本物の虎を写生した絵も伝わるようになります。そして明治時代になり、明治5(1872)年に東京の湯島聖堂で開催された湯島聖堂博覧会において日本各地で集められた珍しい動物たちが展示され、明治15(1882)年には日本初の動物園である上野動物園が開園したことによって、それまで空想上の生き物だった動物を直接目にする機会が増え、美術における動物表現も変化していきます。
本展覧会では、佐久市立近代美術館のコレクションの中から動物をモチーフとした作品を紹介します。写実的に動物を表現したり、あるいは動物に対する感情を投影して制作したり、同じ動物をモチーフにした場合でも作家ごとにその表現は異なります。また、実際に生息する動物をモチーフとすることもあれば、空想上のいきものをモチーフとすることもあり、その題材も様々です。作家ごとに異なる動物に対する眼差し、そして表現を、作品を通して味わってみてください。

【同時開催】
コレクション展 特集:平山郁夫
コレクション展 新・収蔵品展ー令和6年度収蔵ー