19世紀半ば以降、パリのモンマルトルにはカフェやキャバレーが次々と誕生しました。それらの場所は単に飲食を供する場としてだけでなく、芸術家たちの交流場所および文化の発信地として機能していました。マネを慕って〈カフェ・ゲルボワ〉に集まったモネやルノワールのほか、パリに出たゴッホにとってもカフェは創作を支える場となりました。トゥールーズ=ロートレックはカフェ・コンセールの常連となり、出演ダンサーや歌い手たちを次々と描き、一世を風靡しました。こうした世紀末パリの動向はバルセロナにも波及し、カザスやルシニョルによる〈クアトラ・ガッツ(四匹の猫)〉での様々な活動を通じて、若きピカソの芸術形成にも大きな影響を与えました。
 本展は、三菱一号館美術館とひろしま美術館が共同で企画する初めての特別展です。両館のコレクションを中心に、多様な芸術潮流を胚胎し育まれたカフェ文化にまつわる作品群を展覧することで、19世紀から20世紀にかけての芸術家たちの交流や、そこで生まれた芸術運動を様々な切り口から再考し、その豊かな成果を検証します。