本展では、東アフリカの豊かな文化を背景に、マコンデの人々が生み出してきた独自の木彫芸術の中から、「ビナダム(人間)」を主題とする作品群に焦点を当てます。

スワヒリ語で「人間」を意味する「ビナダム」。そこに刻まれているのは、特別な英雄や神話の神々ではなく、日々の暮らしをひたむきに生きる名もなき人々の姿です。大地を耕す人、重い荷を運ぶ人、そして顔を寄せ合って語らう人々――。重厚なアフリカ黒檀から彫り出された力強く大胆な造形の中には、人間の営みに対する彫刻家たちのどこか温かで、深いまなざしが宿っています。

マコンデ彫刻といえば、精霊(シェタニ)や抽象的な主題が広く知られていますが、このビナダムの作品群には、当時の生活の息づかいや体温までが伝わってくるような、瑞々しく具体的な情景が広がっています。

 卓越した技術と豊かな想像力によって命を吹き込まれた彫刻たち。遠く離れたアフリカの地に生きる人々のたくましい営みと、時代や国境を越えて人々の胸を打つ普遍的な人間像の魅力をぜひご覧ください。