富岡鉄斎(1836~1924)は明治8年(1875)、生涯でただ一度の富士登山を果たし、数え89歳で没するまで、富士を主要な画題の一つとして描き続けました。六曲一双の画面に遠望図と頂上図を配した《富士山図》は、その画業の集大成ともいえる作品であり、近代美術史においてもひときわ異彩を放つ傑作です。
本展では、多様な構図や技法によって表現された富士山図の数々を中心に、富士登山の様子を記録した旅行記や描く際に参考とした資料も展示し、「万巻の書を読み、万里の路を行く」ことで培われた富士へのまなざしをご紹介します。また、鉄斎は江戸時代の文人画家・池大雅(1723~76)が描いた富士を高く評価し、大きな関心を寄せました。大雅の没後250年を記念する本展では、大雅の作品を臨摸した粉本をはじめ、鉄斎が蒐集した『池大雅家譜』や大雅所用の古筆などの関連資料もあわせて展示します。鉄斎による大雅研究の深まりと、その敬慕の軌跡をご覧ください。