広島県呉市に生まれ育った平井亨季(1996年生まれ)は、近年広島市と呉市という隣接したふたつの街の歴史と現在に着目し、ロトスコープによるアニメーション映像と立体模型、冊子によるテキストなどを組み合わせながら作品を制作しています。
平井は次のように語っています。「街の歴史と個人の記憶は相似形と言いたくなるほど似て感じられる時があります。私はこれまで作品の中で記憶すること、忘却することについて考えてきましたが、最近ではそれが広島に生まれ育ったことと無関係でないように思えてきました。それは昔から実はそうだったというよりも、広島/呉の歴史を知ることで似ているように見えてきたというのが実際だと思います。広島にまつわる様々な問いを知り、自分なりに思い浮かべる中で『私は広島/呉をどのように覚えていたいのか』という問いがいつも浮かんできます」と。
本展では、街の歴史と個人の記憶を重ねあわせて語る/描くことはセルフケアの実践となりえるのではないか、という平井の関心を起点に制作された新作を紹介します。「平和都市」と「軍港都市」の間、街の歴史と個人の記憶の間、記憶と忘却の間、映像と立体と冊子の間を行ったり来たりしながら、時間と空間がもつれるような感覚を味わってください。やがて「広島(呉)を少しでも多孔的で通気性のよい街として想像しようとしています」と語る平井の言葉に共感してもらえるでしょう。