フォーカス
美術館館長の4割が女性に──スイス現代美術界のパワーウーマンたち
木村浩之
2011年05月01日号
マデレーヌ・シュプリ女史(Madeleine Schuppli 1965〜)
アールガウ州立美術館館長
チューリヒ生まれの彼女は、チューリヒとバーゼルのちょうど間くらいのアーラウという町にあるアールガウ州立美術館(クンストハウス)の館長である。2007年のターナー賞を受賞したてのマーク・ウォーリンガー(2008年)、2011年ヴェネツィア・ビエンナーレ(スイス館)出展作家のトーマス・ヒルシュホルン(2011年)などスイス国内外の動きをいち早く形にしている。シュプリの前職は、トゥーン美術館のディレクター(2000〜2007年)。2000年就任時35歳。ベルンから観光で有名なユングフラウ地方へ電車で30分ほど行ったこところにある湖畔の町トゥーンにある美術館である。そこでもバルタザール・ブルクハルト(2001年)、クリストフ・ビューヘル(2002年)、クラウディア&ジュリア・ミュラー(2003年)など大御所・若手・スイス人アーティストの個展をバランスよく組み合わせたプログラムにより当時から高い評価を得ていた。トゥーン在任中の2002年にバーゼル大学大学院のカルチャー・マネジメント社会人講座を修了、またネスレ芸術財団の顧問、UBS銀行文化財団の役員、スイス政府下の文化支援財団プロ・ヘルベチアの役員にも就いている。
ちなみに、トゥーン州立美術館の学芸員としてシュプリのもとで働いていたファニ・フェッツァー(Fanni Fetzer 1974〜)は、2006年よりランゲンタール市立美術館(ランゲンタール、ベルン郊外)の館長に就任している。
ヘレン・ヒルシュ(Helen Hirsch1963〜)
トゥーン州立美術館館長
さらに、2007年にシュプリの後を継いでトゥーン州立美術館館長に就任したのは、ヘレン・ヒルシュであった。彼女も前職ですでに館長職を務めており、40歳代前半で館長となっているひとりである。
彼女は、元キャビンアテンダントおよび元看護婦という特異な経歴の持ち主である。その後、30代前半になって美術史の学位をとり、バーゼル・クンストハレにて3年ほどキュレーターを務めた後、バーゼル郊外のリースタール・クンストハレに招聘され、そこでキュレーターを務めつつバーゼル大学大学院のカルチャー・マネジメント社会人講座を修了している。上記の前館長シュプリと同時期だ。そして2006年に芸術監督に昇格するものの、翌2007年には、トゥーン美術館の館長に就任となっている。