フォーカス

夏休みのグループ展は若いキュレーターが力量を発揮する大舞台。悪ぶるアーティストたちのショウタイム!

梁瀬薫

2011年08月01日号

キース・へリング展

Keith Haring
2011年5月4日〜7月1日
Gladstone Gallery
http://www.gladstonegallery.com/haring.asp

 大不況、ドラッグ、セックス、暴力が蔓延し、混沌としていた80年代ニューヨークのヒップホップ・シーンの真っ直中でアートに生き、90年エイズによりわずか31歳でこの世を去ったキース・ヘリング。短い人生のなかでストリート・アートから地下鉄のグラフィティー、壁画制作、子どもとのワークショップ、ポップショップまで、新しいヴィジュアル・ランゲージのコミュニケーションを果たし、また、エイズの研究や予防運動のための活動基金を継続させるため、亡くなる前に財団を設立した。ヘリングのイメージは現在もグッズやファッションを通して一般大衆にまで浸透している。アート作品も、そのポップでストレートな色彩の絵画と彫刻作品が世界各国の美術館や画廊展などでお馴染みだ。しかし今年から財団の公式画廊となった老舗画廊グラッドストーンはいわゆるアート市場で高額な値の付くような代表的な作品ではなく、黒人ダンサーのビル・T・ジョーンズとのパフォーマンスで制作された、墨の線が自在に延びた生き生きとした作品と、ヘリングがまだ20歳になったばかりでニューヨークの美術学校に入学したばかりの時代に描かれたスケッチブックが公開された。スケッチブックはポケットに入るほどの小さなノートブックで、鉛筆や木炭、マーカーなどでその時々に感じたことや、性への欲望が思うままに日記のように綴られている。緻密な描写と完成された構成には目が釘付けになる。作家の真髄とも言えるこの珍しいスケッチの初公開に、ニューヨークの評論家たちは、「ストリート・アーティストとされているヘリング芸術の根底に潜む、異なる一面がベテラン画廊のキュレーターによって披露された」などとコメント。混沌としていたニューヨークの80年代に生きたバッド・ボーイの本質である。


左:Manhattan Penis Drawings for Ken Hicks, 1978 Graphite on paper; 8 1/2 x 5 1/2 inches (21.6 x 14 cm)
右:Untitled, 1978 Various inks and pencils on paper; 8 1/2 x 5 1/2 inches (21.6 x 14 cm)


© 2011 Gladstone Gallery