フォーカス
「ON/OFF」展、現在進行形のアーティストたち
多田麻美
2013年03月01日号
争いつつ共存する作品
今回の展覧会の作品の多くはいずれも、展覧会のテーマに合わせてつくられたわけではない。UCCAの館長を務めるティナーリ氏は出展作品について、「本来、アーティストの制作計画のなかにあって、ちょうどこの展覧をきっかけに、この場に出されたもの。この関係の微妙さがとても大切」だと語っている。作品の配置図は、合わせて20から30のバージョンがつくられたが、プランも含めて、絶えず調整のなかで変化を繰り返した。時には会場のために、作品もそのプランを変えたほどで、作品制作とその配置は一種の「協力状態」にあったと言う。
とはいえ、氏も語っているように、強い主張を持つ作品たちは互いに争い、その声はとてもやかましく、「さまざまな現象が湧き返っている中国の現実そのもの」と言ってもいい。なかでも際立っていたのが、都市と農村の境界部の状態を取り上げた《都市と農村の結合部──序幕》やメイド・イン・チャイナの世界中への普及を表わした李富春の《B2B2C》、および先ほども少し挙げた映像作品だ。日本のドッキリカメラの場面を引用したり、操り人形のように身体の一部を紐で吊ったり、ポン菓子をつくる装置を爆弾のように爆発させたりする楊健の《遅かれ早かれ、稲妻が私たち一人ひとりを襲う》、一貫して歴史と暴力の問題に挑んできた金閃の《ごろつきの略史》、常軌を逸した創造行為を何気なく繰り返す女性を描いた、方璐の《恋愛中の女性は芸術家》、エドワード・ホッパーの名画《ナイトホークス》にインスパイアされたという、白と黒の映像美が美しい鄢醒の《芸術、あまりに芸術的な》などが並び、まさに映像の饗宴が繰り広げられていた。また、モハメド・アリやスーパーマンなどをめぐる伝説を作品のなかに持ち込んだ陳軸の《アリ、スーパーマンとバナナの秘密》は、映画や映像の言語と絵画を組み合わせたもので、英雄、暴力、身体、生死の問題を、バナナ、そして英雄たちの「中間的であいまい状態」を通じて告発していた。