前回のインスタレーション同様、今回もソーラーバッテリーを用いたパフォーマンスである。普通は蓄電池などに接続するところを、ここではアンプの音声入力を通してスピーカーに直結されている。本来は電源であるはずのソーラーバッテリーが、音源として用いられているわけだ。あとはソーラーにどのような光信号をインプットするか、ということなのだが、そのセンスが尋常ではない。
床面に置かれたソーラーの真上に、絵はがき大の紙片を取り付けた金具と2本の懐中電灯がつり下げられている。おもむろに扇風機で風を送ると、まさに絵づら通りに、風鈴のように澄み切った金属音がスピーカーから流れ出す。風で揺り動かされた金具が懐中電灯をヒットする際、豆電球のフィラメントが微妙に振動し、それが光の揺れとなってソーラーバッテリーにインプットされ、スピーカーから音声がデコードされるのだ。紙片が周囲に光を乱反射するのも美しい。続いて取り出したのは小型ラジオ。ただし内蔵スピーカーのコーンが取り除かれ、そのかわりに豆電球が取り付けられている。もちろん本体から音は出ないのだが、その光をソーラーにかざすと、ノイズ混じりのラジオの音声がスピーカーから聞こえてくるのである。音声信号を光の振動へと変換した、超プリミティブなワイヤレス光通信システムというわけだ。最後に2本のスティックをとりだし、懐中電灯の光をスライスするように振り回す。スティックの描く軌跡が暗闇の中に浮かび上がり、瞬間的に光が遮断されるのとシンクロして、バタバタというノイズが出る。
レディ・メイドといってしまうと簡単だが、彼は興味深い音現象を発見し、切り取り、提示する。興味が「おもろいこと」にダイレクトに直結していて、一見、ことさらにデザイン的にまとめる配慮がないようにみえるのだが、かえって潔いセンスのよさを際立たせている。そういえば最近、「世界は美しい音で満ちとる」と笑顔で語っていた。