logo
Recommendation
愛知  一藤木葵
..
 

exhibition曽根裕・ビデオワークス1995-1998

..
曽根裕・ビデオワークス1995-1998「バースデー・パーティ」
..
曽根裕・ビデオワークス1995-1998「バースデー・パーティ」
「バースデー・パーティ」

 ひたすら深夜バスから撮った映像が流れされ続ける。暗い高速道路、外灯のともる道、夜明け間近ほのかに明るくなり始めた地平線、寝静まった車内の乗客の顔。曽根裕の「ナイト・バス」という95年制作のビデオ作品だ。深夜の長距離バスで誰もが感じる半覚醒の状態。それを思い出させる映像が延々と続いていく。大音響が鳴り響き、最後はタイの田舎を走る昼間の光景が続き、見る側は時間の感覚も失う。
 曽根は、友人たちに自分の知らない土地を旅してビデオを撮ってもらい、彼自身では全くわからない内容の映像を自分で編集し、この作品を作ったという。
 彼は、この「ナイト・バス」でコミュニケーションをテーマにした。この作品では、制作過程そのものが若い友人たちとのコミュニケーションから成り立っており、その段階から作品が始まっている。友人たちへのレターに回答するビデオテープ、その編集作業、観客に対する上映という一連のコミュニケーションから作品が作られているのだ。
 ドイツの小都市ミュンスターで毎日、自分のバースデー・パーティを開き、その模様を撮った「バースデー・パーティ」。いまだ見たことのないもの、いまだ知らない何ものかを探し、スクープを求めてジャングルを実際に探検した様子を撮った「スクープ」など、彼のビデオ作品は、現実以上に現実的なフィクションとしての映像と、現実の間を複雑に行き来しているようにも見える。「現実の映像」と思わせておきながら、実は彼の作品はフィクショナルなアート作品なのだ。いわば見る側と彼の間のコミュニケーションから生まれた不条理性こそが、彼の作品の本当のテーマなのである。
 この展覧会では、こうした彼のビデオ作品のすべてを1年かけて上映、展示していく。
..
会場:現代美術館・名古屋
   愛知県名古屋市港区港町1-7名古屋港ガーデン埠頭ジェテイ・イースト3階
会期:1999年7月17日(土)〜2000年7月16日(日)
展示予定:9月19日まで「バースデー・パーティ」(22分)
     9月25日〜11月28日「すべての旅の終わりから」(21分)
     12月4日〜2000年2月6日「ナイトバス」(15分)
     2月12日〜4月23日「スクープ」(20分)
     4月29日〜7月16日「魔法の杖」
開館:11:00〜18:00 休館日=月・火
入場料:一般700円 大学・高校500円 中・小学生300円
問い合わせ先:現代美術館・名古屋 052-654-5105

top

川俣正ワーク・イン・プログレス
exhibition 豊田市美術館コミッションワークのためのプラン

..
川俣正ワーク・イン・プログレス「物見台/テラス」
「物見台/テラス」カタログp.63より
提供:川俣正+オンザテイブル
協力:豊田市美術館
 川俣正は、世界中で木材を用いた構築物のインスタレーションを発表してきたアーティストだ。例えば、廃材を工事中の足場のように組み合わせて、歴史的建造物を包んでしまったり、時には街の片隅に壊れかけた物置のような構築物を立てたり。彼のインスタレーションは、周辺の景色を変化させることなく自然にその街、その建物に寄生していく。壊れかけた物置のような構築物にはホームレスが住んでしまったこともあるという。
 そして彼の作品が街に入り込むことで、そこに住む人々は、その土地や建物が持つ性格に徐々に気づき始めるである。それは決してその土地の社会問題を映し出すというのではない。あくまでその土地がしている呼吸のようなものが見え始めるのだ。
 彼は、インスタレーションを行う土地を何度も訪ね、空気を肌で感じ、そこで生活する人々を見、作品作りを行なっていく。今回、彼は次の作品を展開する場所を愛知県豊田市に決めた。豊田市は周知の通り、世界的企業、トヨタ自動車の企業城下町だ。トヨタ操業以前は、養蚕が盛んな地方都市だった。この日本の近代を象徴するような街で、彼はどんなプロジェクトを見せてくれるのか。そしてこの街のどんな空気が見えてくるのか。
 現在、彼は豊田の中心部を流れる矢作川とそこに流れ込む水路を軸にね遊歩道を設置するプランを提案している。その遊歩道には、あずまやや物見台も設置されるという。
 彼の制作プロセスには、地域の住民の制作への参加がある。川俣にとって、制作の過程で得られる人々とのコミュニケーションは作品を完成させること以上に重要なのだ。
 これから彼の豊田でのプロジェクトは、住民を巻き込み本格化していくだろう。その前にこのプロジェクトを模型とドローイングで伝える展覧会が、豊田市美術館で開かれている。
..
会場:豊田市美術館 
   愛知県豊田市小坂本町8-5-1
会期:1999年6月29日(火)〜10月3日(日)
開館:10:00〜17:30 休館日=月
入場料:一般300円 大学・高校200円 
問い合わせ先:豊田市美術館 0565-34-6610

top

exhibition危機の時代と絵画 1930-1945

..
危機の時代と絵画 1930-1945

 重い展覧会である。テーマは、1930年から45年までこの日本という国に重くのしかかっていた「戦争」だ。
 1930年から45年。世界恐慌、ファシズムの台頭。31年には満州事変が起こり、日本は一気に戦時色が強くなっていく。日中戦争、太平洋戦争へと戦火は拡大し、国内では、思想弾圧に始まり、戦争遂行のための思想統制、挙国一致体制へと突き進んでいった時代だ。
 美術の世界も例外ではなかった。戦争への協力が求められ、シュルレアリスムのような自由な表現には弾圧の手が伸びていた。この時期、美術の表現で知られるのは「聖戦美術」と呼ばれる、いわゆる「戦争画」である。国威発揚を目的に戦争を美化し、ある種の感動を国民に与えるために描かれた、戦争の風景画だ。
 しかしこの展覧会には、直接兵士の姿や戦場を描いた戦争画はない。表面的ではなく、精神の深い部分で時代の恐怖や不安、悲しみを感受し、それを塗り込めた画家たちの作品が展示されているのだ。靉光、松本竣介、難波田龍起、鶴岡政男、国吉康夫など、この展覧会が扱っている時代に青年期を過ごした画家の作品が中心だ。
 例えば、時代を象徴するかのような暗い夜の底に咲く隠花植物の上を一匹のアゲハチョウが飛ぶ、靉光の「花園」。人気のない東京駅裏の橋を暗いタッチで描いた松本竣介の「橋」。国吉は、空襲で廃墟になった街を、赤いマフラーをして歩く女性の姿を描いている。
 この展覧会を見ていると、戦争を描くのに戦争場面を描く必要のないことがわかる。戦争画以上に、この時代の精神を生々しく伝える絵画がそこにあるのだ。逆に言えば、国家によって統制された作られた戦争の気分と、市井の人々の気持ちの間に、どれだけのギャップがあったか、展示作品を見ていると考えさせられる。おおむね展示作品は暗く、重い。それが当時の市民の気分なのだろう。
 82点の作品を、時代ごとに1930-36、1937-40、1941-45の3つのセクションに分けて展示している。
..
会場:愛知県美術館 
   愛知県名古屋市東桜1-13-2
会期:1999年9月3日(金)〜10月17日(日)
開館:10:00〜18:00 休館日=月
入場料:一般1000円 大学・高校700円 中・小学生400円
問い合わせ先:愛知県美術館 052-971-5511

top

report美術ライター・レポート  一藤木葵 (いっとうぎまもる)

..
 最近、東京のギャラリーを歩くときに困ることがあります。これまで使っていた情報誌が使えないんです。気が付くとギャラリーの情報が大幅に削られているではありませんか。
 セレクトされた情報になっている。例えば銀座のギャラリーは基本的には日曜以外はやっている。やっていることはわかっているんだけど、その情報誌を見たら載っていないからなにをやっているのかわからない。それ以前に、これじゃ、そのギャラリーがあるのか、ないのか。その日、その週、営業しているのか、していないのかもわかりません。たくさんある情報の中から選んで、見に行くのが楽しみだったのに。最低! とまあ、そんなことを書きつつも、その情報誌の美術ページを実は、前に編集していたんです。その編集部を離れ、はや5年。最近は単に美術の原稿執筆や雑誌の編集だけでなく、事業や営業などにも手を出しています。、将来的には、営業のできるアート系エディター、キュレーターを目指します。その前に、古巣の雑誌のアートページを何とかするのが課題ですが。

top

北海道
福島
東京
愛知
大阪
香川
岡山

home | art words | archive
copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1999..