大阪
原 久子
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河口龍夫――関係・京都
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はじめて、植物の種子を鉛の板で覆った河口作品をみたとき、発芽して成長することが永遠にないのか、それとも永遠の生命をここに宿しているのか、どちらなのだろうかと思いをめぐらせた記憶がある。
展覧会は1970年の作品『陸と海』という作品からはじまる。潮の干満を、波打ち際で定点観測をしたときの記録写真で綴られたこの作品は、地球の動きにリンクしていて、その変化は自然の力を見えるかたちにしていた。
『DARK BOX』(75年)とその傍らに置かれた『DARK BOX - 1999』(99年)は、「闇」を封印した作品だが、25年の歳月を隔てて同じかたちの鉄の箱に閉じ込められた「闇」の風景はいったいどう違い、どう同じなのだろうかという疑問がちらつく。この作品と対をなす『光(電球)』『光(蛍光灯)』(いずれも75年)は電源を入れ光りを放っている電球と蛍光灯を閉じ込めている。われわれが当然のように体験している「闇」と「光」を素材にすることで、時間と空間の問題をわたしたちにつきつけているのだろうか。『関係――蓮の時・銅の空間』(98年)では、3千年の時を超えて蘇った蓮を蜜蝋で覆い、銅線で壁を伝わせながらつないでいく。床に敷きつめられた銅板は、うえを歩くわたしたちの姿をくっきり映し出し、蓮池の水面を歩いて渡っているような気分にさせる。中央に置かれた2つのパレット状のオブジェを豆電球の光りがつないでいる。その小さな灯火は、銅板のうえを歩くわたしたちのからだを電流が通過していること、すべてものがつながっていることを想起させる。古代の化石のフロッタージュ。鉛で覆われたアップライトピアノは彼の家族が使っていたものだという。種子を鉛に詰めた1オクターブの長さの塊が鍵盤のうえに載せられている。視覚的に音を表わしている。
『関係――旅立ち・100種類の花』(1999年)で終るこの展覧会は河口龍夫の約30年の歩みを回顧するかたちになっていた。時空はつねに、そしてどこまでもつながっていることを静かに感じさせてくれる展観であった。
「陸と海」1970
「関係――蓮の時・
3000年の夢」1994
会場風景
「関係――教育・
エドゥカティオ」1992-99
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会期:1999年7月27日(火)〜8月29日(日)
会場:京都市美術館
問い合わせ:tel.075-771-4107
THE LIBRARY 1999
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アートブックなるものは、紙でつくられた作品を1冊に綴ったものを指すことが多い。そういった「書物」の形態を概念にとらわれずに、自由な発想でつくられた本のオブジェたちを集めた展示を、最初の部屋でみることになる。次々と、部屋を進むごとにがらりと展示が変化していくのだが、「ライブラリー」にちなみ、集められた他の3つの作品のほうも興味深いものだった。
図書館の裏側をさまよい歩くような展覧会とでもいうのだろうか。地下室での古厩のビデオを使ったインスタレーション『光触』は、机のうえに1冊の本が載っている。なかが真っ白な本の1ページ1ページがスクリーンの役目も担っていて、本の上をゆっくり流れる、等身大の白い手が謎めいている。自由に観者もページをめくることができる。ビデオソースとしては一つなのだが、ページをめくるという行為と、ビデオの手の動きとが重なりあっていき、さまざまなかたちをつくっていく。机から少し離れたところの床には、青い空に浮かぶ雲が投影されている。1階に戻り、通路を通って奥の展示室に移動する。その通路には、鉄板の錆を布に定着させた『存在の痕跡』(塚越裕子)が天井から吊されている。布という素材感からか、実際に触れてはいないのだが、通過する身体に触れてくる感覚がある。奥の部屋にたどり着くと、そこには非常に個人的な居室(書斎)の風景がリアルに絵画化され、窓から入ってくる光りにも似た映像が流れている(『机上の書斎』小川茂雄+Lap)。主人のいない全ての機能が停止した部屋(内)と、機械的な動きを伴う(屋外を映したと思われる)映像の動きの対比が面白い。
2階に上がると『BOOKS SOWAKA』と壁に大きくかかれていて。ところ狭しと、アート&カルチャー系のミニコミ誌やフリーペーパーが並んでいた。日本全国から独自のセレクションで集められた約100銘柄は、買ったり、もちろんフリーペーパーは読んで字の如く持って帰ることができた。手にとって読みはじめると切りがなくなってしまう。
至福のときを与えてくれた図書館であった。
展示風景
展示風景
2階の
フリーペーパー・コーナー
2階
『BOOKS SOWAKA』
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構成:100名のアーティストによる本のオブジェ作品、小川茂雄+Lab、塚越裕子、古
厩久子、フリーペーパー・ミニコミ誌の書店
会期:1999年8月24日(火)〜9月5日(日)
会場:ギャラリーそわか
問い合わせ:tel.075-691-7074
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