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東京  荒木夏実
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exhibition「監督特集/ 映像の詩人 パゾリーニ」

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「監督特集/ 映像の詩人 パゾリーニ」

先日渋谷で見逃したパゾリーニを初めて観ることができた。私が観た2作品のうち「デカメロン」は抱腹絶倒のシーンも多く思いのほか楽しい作品。「ソドムの市」はファシストたちの狂宴を描いたヘビーな題材を扱っているが、現代を生きるわれわれにも何の違和感なくリアリティーを感じることができるので恐ろしい。状況が変われば同じことが起こることは容易に想像がつく。人間の性を淡々と、的確に表すパゾリーニの描写力に感服する。ショッキング性ばかりが強調されがちなパゾリーニだが、想像したグロテスクさはなく、唯美主義的なぞっとするような美しさと現代的感覚が強く印象に残った。イタリア芸術の懐の深さと成熟(爛熟?)を感じる。
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会場:パルテノン多摩
会期:9月15日(木)〜26日(日)


exhibition「Releasing Senses 感覚の解放」

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「Releasing Senses 感覚の解放」

 新ギャラリーの開館記念展は、アーニャ・ガラッチオ、クリスチャン・マークレー、村岡三郎、マルティン・ヴァルデの4人による「見て、触って、感じる展覧会」として行われた。CDを敷きつめたマークレーの「エコーとナルシス」の上を歩いていくと、色とりどりの水風船のようなものを台に並べたヴァルデの「ハンドメイツ」が現れる。ぶよぶよ感を想像してこれを握ってみると、柔らかな感触の奥に奇妙な堅さが感じられて一瞬たじろぐ。なんだか変!でも気持ちいい。「触る」というちょっとセクシーでユーモラスな感覚を上手く使った楽しい作品であった。
軽やかな感覚を表現した作品の中で、自分の体温と同じ温度を毎日銅の柱に与え、盛られた塩の一部が変色していく村岡三郎の「エントランス」は、じめじめしたウエットさが感じられてすっきりしなかった。なんとなく全体のコンテクストからのズレを感じるのだが……。
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会場:東京オペラシティアートギャラリー
会期:9月9日(木)〜11月21日(日)
問い合わせ:03-5353-0756


exhibition「ハラ・ドキュメンツ6:須田悦弘−泰山木」

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 木彫りの植物を作る須田悦弘が、原美術館の前庭にある大きな泰山木をテーマに、3室を使ったインスタレーションを発表した。部屋のフローリング板を持ち上げている根とその横に生える雑草など、ニクい演出がほどこされている。狭く囲った空間の奥に咲く大輪は、どきりとするほど生々しい。美しいだけではない、したたかでたくましい植物の毒気が見事に表現されていた。
本展のもう一つの見所は、ベランダに置かれた須田のデビュー作「銀座雑草論」(1993)である。この車輪のついた巨大な装置の内壁には秀吉の金の茶室さながらに金箔が貼られ、一輪の雑草の木彫が茶花のごとく生けられている。貸し画廊のシステムに疑問を感じていた作家は、この手作りの画廊をパーキング・メーターを移動させながら公開したのである。ややもすると「日本の伝統」に結びつけられる須田の作品であるが、彼の原点にアナーキーでラディカルな精神があることを忘れてはいけない。

「ハラ・ドキュメンツ6:須田悦弘−泰山木」

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会場:原美術館
会期:9月11日(土)〜11月7日(日)
問い合わせ:03-3445-0651



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