テーブルの上に手製のミニカーが数千台、山と積まれている。そこにワイヤーで吊るされた磯崎くんが登場し、ボールペンをノックしてミニカーをばらけさせていく――。この日おこなわれた「渋滞緩和」のパフォーマンスだ。この日以外は磯崎人形がぶら下がっている。ところで、磯崎くんはその2日後に北海道の美術館学芸員の南部亜希子さんと結婚式を挙げ、4日後にはACCのグラントを得てニューヨークに旅立つ(ただし単身赴任)というおめでた続きだったのだが、4日後といえば運命の9月11日。JFKに向かう機中、アメリカの同時多発テロが勃発したためカナダのバンクーバーで降ろされ、バスでシアトルに連行され、そのままマリナーズの本拠地に1週間ほど監禁されたという後日談を聞いた。しかも彼、ニューヨークではエンパイアステートビルとワールドトレードセンターと自由の女神のあいだで伝言ゲームをするというプランを出してACCに受かったのに、肝心のワールドトレードセンターそのものがなくなっちゃったという信じられない話。そういえば、磯崎くんの初個展は1995年、いまはなきルナミ画廊で開かれたのだが、その初日の3月21日に地下鉄サリン事件が起こり、オープニングどころじゃなかったらしい。その後も彼が個展を開いたギャラリーは次々つぶれるし、このZOOMも磯崎くん以降は白紙状態。絵に描いたような疫病神、いや、運命の男なのだ。
[9月7日(金) 村田真]