本社ビル内でも、警備員に呼び止められないで到達できる1階ロビーでやってくれてるのがいい。警備員、おまわり、銀行マンは私の敵だ。あ、税務署員もね。それから締切日まぎわの編集者。そうそう、にこちゃんの母も。展覧会のほうは、
最優秀作品賞がなくて、優秀賞2作品、準優秀賞4作品、奨励賞7作品の計13点の出品。絵画あり彫刻ありインスタレーションあり映画あり演劇ありダンスありで、もちろん愚作もあったけど、ジャンルもレベルもてんでばらばらなだけに、かえって凡庸な現代美術展より楽しめた。ちなみに、優秀賞は64歳のおやじ(林田嶺一)と20歳のねーちゃん(稲垣民子)という落差がすごい。とくに林田さんはパンフに載ってる顔写真もインパクトあるが、「幻の『元』満州國の場から引き揚げ帰国までの幼児体験のドラマ」と題する絵画インスタレーション(?)もエイブル・アート並のすごさ。また、準優秀賞の岡本武紫(62歳)の絵画「壊れた手巻時計の旅」は、「作者の郷土である四国遍路を皮切りに、ヨーロッパ、ニューヨーク等の旅先各地を作者の感性で表現したシュールレアリスムの世界。各作品ごとに詩の朗読付」だ。ここらへんはおそらく椹木野衣審査員の選択ではないかと思うが、こういう壊れたおやじに日の目を当てるキリンアートアワードは尊敬に値する。ていうか、自分が壊れたおやじになりつつあるのか。
[10月15日(月) 村田真]