テレビ番組
『サウス・バンク・ショウ:ギルバート&ジョージ』
- 放映チャンネル:
- 英国ITV
- 放映日時:
- 1997年2月9日、16日
- 夜10:45 〜11:45
Gallery : Selected art from The Hess Collection
http://www.hesscollection. com/gallery01.html
Cold
http://cac.psu.edu/~mtd120/ palmer/otherworks/ gilbert.cold.html
Gilbert and George - Reference Page
http://www.artincontext. com/listings/pages/ artist/4/5aomcap4/menu.htm
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ギルバート&ジョージは、
本当にゲイで女性差別主義者で
人種差別主義者(だったの)か?
●毛利嘉孝
イギリスを代表するアート・ユニットであり、自らを「生きる彫刻」と呼ぶギルバート&ジョージのテレビの特別番組が、日曜日の夜(決して深夜ではない!)2回に渡って放映された。一昨年、サウス・ロンドン・ギャラリーで行なわれた久しぶりの個展が、自らのウンコから肛門までもこれでもかといわんばかりに露出した作品のオン・パレードでイギリス中の度肝を抜いたものだっただけに、アート・ファンのみならず、一般の視聴者からも関心を寄せられた。
二人がゲイであることはよく知られる事実だが、その二人に関するゴシップはつきない。曰く、二人は夫婦である、曰く、二人はお揃いのパジャマで同じベッドに寝ている。曰く、二人がゲイだというのが、そもそもパフォーマンスの一つで、ジョージには実は正式に籍を入れた妻と子供が、ギルバートには若いガール・フレンドがいる(本人たちは、これを否定している)云々。
もちろん、こうしたゴシップに答えることがこの番組の目的ではなく、番組はもっとアーティスティックに制作されており、ジェラルド・フォックスが10ヵ月かけて撮影した彼らの「生きる彫刻」としての記録である(もっともフォックスは、最近メディアを騒がしたギルバートに妻子がいるとは思えないとコメントしている)。
86年にターナー賞受賞直後、その徹底したゲイ至上主義の美学のために、人種差別主義者で性差別主義者だというレッテルをはられ、イギリス国内では二人にとって苦難の時代が続いた。しかし、一昨年の大復活では、かつてみられたナルシズムはあとかたもなくなり、この10年間のパージを一気に埋めたかのようだった。
評者は、この件に関しては彼ら自身も必ずしも無罪ではないと考えている。再復活の成功は、こうしたレッテルに対して彼らなりに理論武装を再編した結果だろう。今回のテレビ番組は、ポップ・アートやテクノ・アートさらにはロック史の中において想像力の中心の一つであり続けたギルバート&ジョージの再評価が、完全にはじまったことを示しているといえる。
もちろん、日本のテレビの現状を考えると、日曜日の夜、2週連続でこんな特番が組まれることがなにより最大のショックだったりもするけど。
[もうり よしたか/ カルチュラル・スタディーズ]
mouri@dircon.co.uk
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