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a)【注目すべき「新人展」としての「卒展」】……………………● 椹木野衣


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美術系大学・学部「卒展」情報
Art Information - Jan. 21, 1997

音楽学部・学科「卒業演奏会」情報
Art Information - Jan. 21, 1997

東京芸術大学
TOKYO NATIONAL UNIVERSITY OF FINE ARTS AND MUSIC
http://www.geidai.ac.jp/

注目すべき「新人展」としての「卒展」

●椹木野衣

 

どこの大学にも「卒展」と総称してよい制度としての「新人展」というものはあって、ロンドンやニューヨークでは新人発掘のための最大の機会として多くの画廊、評論家、ジャーナリズムの眼をひきつける事になるのだが、日本ではこうした「卒展」のたぐいが話題になったという事はついぞ耳にしたことがない。
  これは、日本の貸画廊制度が、予算さえ許せば、「銀座」に象徴される表舞台で新人が発表することを可能にしていることとももちろん無縁ではなかろう。欧米のように、街のギャラリーでデビューできる作家はほんの一握りにすぎず、他の大多数の作家は個展はおろか、まともに発表すらままならない環境にあっては、学校を単位に開催される「卒展」は、そうした一本釣りを期待できる最初で最後の機会かもしれず、いきおい、作る側と見る側双方の熱の入り方も異なってこざるをえない。
  そのことを考慮に入れてなお、日本での「卒展」に対するほとんど無視に近い冷遇は、いったいどうしたことだろう。新人のデビューに長く一役買ってきた『美術手帖』のレヴュー欄のように、純粋な新人の発掘機会であってよい場所でも、卒展のたぐいがとりあげられるのはついぞ見たことがな い。
  しかし、新人の活動の展開が、<銀座の貸画廊での発表→『美術手帖』での展評掲載→各種グループ展への選抜→公立美術館での発表>というようにほぼ定型化しており、これにくわえて官僚主導型のコンペティションの制度的定着が、作品を見せる対象を、直接・間接にコレクションに結びつきやすい公立美術館学芸員(すなわち美術官僚)やそれに準ずる層に限定し、在野一般の眼を考慮せず制作される傾向は、ますます強くなってきている。としたら、よくも悪くもそうした制度を度外視して発表される「卒展」のたぐいは、いまだからこそ注目に値する数少ない機会だと思うのだが、どうだろうか。
  さて、そんな「卒展」のひとつとして、1月8日より2月25日まで、東京芸術大学芸術資料館陳列室で、96年度の大学院美術研究科後期博士課程展が開催される。本年度は10名の創作がこの間、発表されるわけだが、その成果に注目してみたい。

[さわらぎ のい/美術評論家]

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