May 20, 1997 (a) |
Column Index - May 27, 1997
a)【脳は色をどのように「見る」のか ―オリヴァー・サックスの新しい本】 ……………………●多木浩二
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『火星の人類学者』
Oliver Sacks
Oliver Sacks Roundtable Biography
Mark/Spcae: Anachron City: Library: Biographs: Oliver Sacks
Sacks, Oliver
Sacks Oliver: An Anthoropoligist on Mars
Book Reviews; "An Anthoropoligist on Mars"
オリバー・サックス著
『レナードの朝 』
Mark/Space: Anachron Libarary: Books: Awakings
『妻を帽子とまちがえた男』
Man Who Mistook His Wife for a Hat, The (1987)
Edwin Herbert Land
脳の仕組みと病気
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脳は色をどのように「見る」のか ●多木浩二
東京近辺の美術館はどれもこれもろくな展覧会をやっていないので、たまには美術家、美術史家、美術評論家などがぜひ読むといい、しかもできたてのほやほやの本を紹介しておこう。オリヴァー・サックスの『火星の人類学者』である。サックスは、一般には映画『レナードの朝』で知られているが、本職は優れた脳神経科医である。ちょっと芝居に興味をもつ人なら『妻を帽子とまちがえた男』を知っているかもしれない。その他に数多くの症例研究をもとにした本の数は多く、いまや世界有数のノンフィクション・ライターである。ことわっておくがどのひとつも興味本位で書かれた本などない。 色を失った画家
nmpの上でオリヴァー・サックスの本について語ってもいいと思うのは、それが知覚の異常をきたした画家の話を皮切りにして、どこかで表現と関係する脳の異常の問題が現われていて、異常を鏡にして読者が自分で芸術についての考察をひろげうる楽しみ(あるいは知的探求というべきだろうが)に溢れているからである。かぎりあるスペースではあまり多くの例を挙げるわけにはいかないので、例としては最初のひとつを挙げて検討しておこう。 人間はみずからを文化のなかで構成する
この画家はみずから努力して次第に色のない世界に慣れていった。手術で多少、色覚を回復できる可能性はあるという医師の提案に反対するようになっていた。このままでいい、と。どうしてか。この画家はこうした色のない世界で、長いあいだかかって自分を再構成していたのだ。そこで可能な想像力と感覚の世界をもった自分をつくっていた。もう一度、彼は自分を高次のレベルで生きる人間(画家)に構成しなおしていた。 [たき こうじ/評論家]
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