May 6, 1997 Jun. 10, 1997

Art Watch Index - Jun. 3, 1997


【ICCオープニング展覧会
 ―常設展示と企画展《海市―もうひとつのユートピア》】
 ………………●村田 真


Art Watch Back Number Index



《海市―もうひとつのユートピア》
会場:
NTTインターコミュニケーションセンター
会期:
1997年4月19日〜
 7月13日
問い合わせ:
NTTインターコミュニケーションセンター
Tel.0120-144199
E-mail: query@ntticc.or.jp
ICC Map

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INTERCOMMUNICATION CENTER
http://www.ntticc.or.jp/

岩井俊雄展―そのメディア・アートの軌跡
The Trace of Toshio Iwai's Media Art
http://www.ntticc.or.jp/
workshop/iwai/index_j.html

Symposium Live Program
アートとテクノロジー/過去から未来への投影
http://white.ntticc.or.jp/
open/live/22_3.html

Music plays images x images play music entrance
http://www.iamas.ac.jp/
iamas1216/index-j.html

「海市」- もうひとつのユートピア
MIRAGE CITY TOP PAGE
http://www.ntticc.or.jp/
special/utopia/index_j.html

Symposium Live Program
もう一つのユートピア
http://white.ntticc.or.jp/
open/live/19_1.html

磯崎新
http://uplab21.uplab.ae.
ynu.ac.jp/tsukimura/
isozaki.html

ICC: Permanent-Exhibition Menu
http://www.ntticc.or.jp/
permanent/index_j.html

三上晴子
コレクション 3 「 存在、皮膜、分断された身体」
http://www.ntticc.or.jp/
permanent/mikami/
mikami_j.html

Symposium Live Program
リアリティとヴァーチュアリティ
http://white.ntticc.or.jp/
open/live/22_1.html

Seiko Mikami Artworks Archive
http://www.v2.nl/
Projects/Mikami.html/

Canon ARTLAB 5th Exhibition
三上晴子 "Molecular Clinic" http://www.canon.co.jp/
cast/AL5J.htm

三上晴子《Molecular Informatics》をヴァージョン・アップ - 四方幸子
Art Information - Jul. 18, 1996

たまごっち情報
http://www.bandai.co.jp/
tam/tac/tamhome.htm

ICCオープニング展覧会
―常設展示と企画展《海市―もうひとつのユートピア》

●村田 真



インターコミュニケーション・センター(ICC)は、その名のとおり「コミュニケーション」をテーマにしている。そのコミュニケーションとは、アートとテクノロジーの、そして観客と作品との関係におけるものだろう。とりわけ観客と作品との双方向的な対話がICCのウリに違いない。つまり、観客の行為が作品内容に変化をもたらし、それが観客の次の行為を促していくというインタラクティヴ・アートのことである。インタラクティヴ・アートは、コンピュータやデジタル・テクノロジーがもたらした新しい芸術、とされている。だが、本当にそうだろうか。
  たしかに、絵画や彫刻といった旧来の芸術は、観客が作品に影響を与えることは(破損でもさせないかぎり)まずないし、また物理的に変化しないことが作品の前提になっている。音楽や演劇といったパフォーミング・アーツも、基本的にパフォーマーから観客へ情報が流れる一方通行の関係だ。しかしパフォーマーが生身の人間である以上、観客が熱狂したりなんらかのアクションを起こせば、それがパフォーマーに影響を与え作品を変化させることはあるし、またそれを目的とするパフォーマンスもある。とはいっても、それはパフォーマー対観客全員の関係においてであり、一対一対応ではありえない。
  もういちど美術に話を戻せば、観客が作品に影響を与えることはないものの、観客の気分や知識、世代など諸々の条件によって作品は変わ(って見え)る。観客はその時の気分を作品に投影し、それを受け取っているのだから。パフォーミング・アーツ(映画も含めて)では、一方的に大量の情報が流れ込んでくるので、そんな余裕はない。つまり、美術の場合、観客との関係性において作品は変化するといっていい。だからといってそれをインタラクティヴだというつもりはないが、少なくとも作品と一対一の対話=コミュニケーションは成立するのである。

さて、ICCの話。オープンから数日後、さっそく出かけてみた。所用のため会場に着いたのはすでに5時近く。6時閉館なのでゆっくり見られないだろうと覚悟していた。
  まず、ワークショップ・スペースでの岩井俊雄の代表作の展示。ここは子供たちを対象にした教育プログラムを行なうところだが、映像の原理がわかりやすく提示されていて、大人でもけっこう楽しめる。もちろん子供たちもおもしろがっていた。だが、それだけ。それ以上なにを望むというのだ?
  上階に昇って、磯崎新企画によるオープニング企画展「海市」。ちょうど会場内でゲスト・アーティストによるギャラリー・トークが行なわれていて、展示を十分見られず。後日再訪したものの、企画趣旨も展示物の意図もさっぱり伝わってこない。私自身はあらかじめプレス資料を読んでいたし、また会場にいたスタッフに説明を聞いたので理解できたが、展示物からそれを知ることはできないはずだ。これほど「コミュニケーション」を拒絶した展示も珍しい。
  常設展示では、8つのブースのうち2つは「調整中」、1つは30分待ち、三上晴子のブースにいたっては2時間も前に受け付け終了という。要するにブースに入れたのは半分の4つだけ。機械の修理に付き添っていたスタッフによれば、全作品が正常に動いたためしはなく、常時どこかが「調整中」だそうだ。世話のかかるミュージアムである。むしろ動物園や水族館に近いのかもしれない。その4つのブースも、入った直後の驚きは多少あるものの、すぐに飽きてしまう。人気の高いブースは見ることができなかったので即断は避けるべきだろうが、少なくともチャチなインタラクティヴ・アートより、絵画や彫刻のほうがずっと深い対話ができるはずだ。
  壮大なる過程を経て陳腐な結論にいたる、とはよくある話だが、最近のメディア・アートはどうやら、壮大なる技術を経て陳腐な芸術にいたったようだ。これは私の偏見だろうか。
  1時間ではとうてい足りないと思っていた私の予想は、幸か不幸か見事に外れ、結局30分ほどで見終えてしまった。これなら「たまごっち」のほうがいい。

[むらた まこと/美術ジャーナリスト]

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