Jun. 3, 1997 Jun. 10, 1997 [special]

Art Watch Index - Jun. 10, 1997


【忘却への抵抗
 ─《漂着重油交換展》】
 ………………●熊倉敬聡

[Art Watch Special]
【第6回ハバナ・ビエンナーレ取材日記】
 ………………●名古屋 覚


Art Watch Back Number Index



《漂着重油交換展》
今後のスケジュール
6月8日〜22日:
横浜ポートサイド・
ギャラリー
(13日17時から藤幡のトークあり)
7月5日、6日:
神奈川県茅ヶ崎市
茅ヶ崎海岸
(10:00-17:00)
7月12日、13日:
神奈川県横須賀市久里浜
(10:00-17:00)
7月20日、21日:
神奈川県藤沢市
片瀬江ノ島海岸
(10:00-17:00)
問い合わせ:
慶應義塾大学
藤幡研究室
Tel.0466-47-5352
Fax.0466-47-5354
E-mail: sosp-info@
flab.sfc.keio.ac.jp





漂着重油交換展
Spilt Oil Swap Project
http://www.flab.mag.
keio.ac.jp/sosp/

Spilt Oil Swap Project / これからの展示予定
http://www.flab.mag.
keio.ac.jp/sosp/schedule.html

慶應義塾大学藤幡研究室
http://www.flab.mag.
keio.ac.jp/

「ナホトカ号」沈没部調査
http://www.jamstec.go.jp/
jamstec-j/PR/
NAHOTOKA/index.html

Yahoo! JAPAN - News:Current_Events:Oil Spill
http://www.yahoo.co.jp/
News/Current_Events/
Oil_Spill/

特報!重油流出事故
http://www.vcnet.fukui.
fukui.jp/~fprs/jp/
zyuyu.html

ナホトカ号油流出事故関係
http://www.eic.or.jp/
eanet/oil/

「ちいさな穴」
http://www.flab.mag.
keio.ac.jp/sosp/hole.html

Milford Haven Oil Spill Homepage
http://www.foe.co.uk/local/
cymru/oilspill/index.html

反「逃走論」のススメ
─スローであることの強度
- 熊倉敬聡
Column - Nov. 5, 1997 (c)

漂着重油交換展に必要な協力参加
http://www.flab.mag.
keio.ac.jp/sosp/
call_for_participation.html

忘却への抵抗
─《漂着重油交換展》

●熊倉敬聡



これまで「CGアーティスト」あるいは「メディア・アーティスト」として知られてきた藤幡正樹が、新たな“移動”を開始した。その名も《漂着重油交換展》
  1997年1月、日本海で座礁したロシア船籍のタンカー「ナホトカ号」から大量の重油が流出し、福井県を中心とする日本海沿岸に流れ着いた。もちろん、マスメディアも大々的に報道し、全国から重油を除去するため、多くのヴォランティアが駆けつけた。
  藤幡の教える大学の研究室からも学生がヴォランティアにゆき、その報告を聞いた藤幡も現地に赴く。そのとき彼は、これは日本の社会にとっての「セキュリティーホール」なのではないかと気づく。「ネットワーク関係の用語で『セキュリティーホール』というのがあるのですが、これはパスワードなどによって守られているセキュリティーを破る方法、そうした抜け道のことをさします。[…]セキュリティーホールというのは、常識的な感覚を越えた発想がなければ、見つからないものなのです。しかし、1月に日本海で起きた重油流出事故を見た時に、『あっ』と、なにかこう『やられたな』という感じがしました。見てはいけないものを見たような、妙な気持ちになったのです。つまり、これはわれわれの社会構造そのものにひそむ『セキュリティーホール』のひとつなのではないかと思ったのです。」(プロジェクトの案内書より)

「記憶」に残すための展示

重油を「清掃」する、すなわち物理的に「消去」しようと懸命な活動を続けるヴォランティアの傍らで、藤幡は、「アーティスト」として、この圧倒的な現実を目の前に、何をなすべきか自問する。その結果、彼は、「消去」するのではなく逆に「残そう」と考える。ヴォランティアの活動を否定しようというのではない。そうではなく、メディアのめくるめく速度によってますます「忘れっぽく」なっている社会の波にこの事件もまた飲み込まれてしまうことにあえて抗い、「記憶」に残し続けようというのだ。
  そこで彼が選んだ「残す」ための方法とは、重油で汚染された現場の様子を写真に撮り、それを1.3m四方の布にプリントしたもの40枚を、毎週末、どこかよその海岸に敷き詰め、「展示」しようというもの。そうして、同じような事故におそわれたウェールズの海岸での「展示」(98年2月)まで、できるだけ多くの日本の海岸で展示していこうという壮大なプロジェクトである。
  以前に、このnmpにも書いたように、これだけすべてが「速い」スピードをテクノロジー的にまたメディア的に競い合う社会では、逆にあえて「遅いこと」の方が“速度”としての「力」を持つのではないか。この、毎週末、日本の海岸を「遅々と」進むプロジェクトは、そのような「力」を徐々に獲得してゆくのでないだろうか。

(なお、このプロジェクトは、藤幡正樹の研究室の学生を中心にすべてヴォランティアで行なわれている。本プロジェクトの主旨に賛同し、人的ないし資金的にサポートを望む者は左記の連絡先に連絡されたい。また、「展示」を受け入れてくれる地方自治体も募っている)。

[くまくら たかあき/
 フランス文学、現代芸術]

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