2019年06月15日号
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アート・アーカイブ探求

渡辺崋山《鷹見泉石像》和洋調和にみる気魄──「日比野秀男」

影山幸一

2013年06月15日号


渡辺崋山《鷹見泉石像》
1837(天保8)年, 絹本着色, 一幅, 115.1×57.2cm, 国宝, 東京国立博物館蔵
Image:TNM Image Archives
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国宝の人物画

 無背景に正装姿の武士の絵に“国宝”とあり、一瞬戸惑った。単に功績のあった歴史的人物像であれば、一見して通り過ぎていたかもしれないが、国宝とはなにごとか。その掛け軸となった絵には、緊張感漂う表情の顔と水彩画を思わせる彩色が施され、内省的な美しさが醸し出されていた。
 日本画の主題は、大きく分類すると花鳥画、山水画、人物画があるが、この人物画に描かれた武士は一体誰なのか、またどこが国宝なのか。絵を目で鑑賞するというより、絵が生まれた事情や背景を調べて考えることになるが、これも絵の見方のひとつになるのだろう。いままで国宝とは気付かなかった見覚えのある顔。武士の絵について探求してみたくなった。渡辺崋山の《鷹見泉石(たかみせんせき)像》(東京国立博物館蔵)である。
 『渡辺崋山(新潮日本美術文庫20)』の著者である日比野秀男氏(以下、日比野氏)に絵の見方を伺ってみたいと思った。日比野氏は、日本近世絵画史を専門とする大学教授であり、1972年東京美術倶楽部で開かれた「崋山百三十年祭記念遺墨展」で画家である渡辺崋山を初めて認識して以来、崋山研究を続けている。突然の取材依頼で電話をかけたときも崋山の師友関係を調べていたところだったと、インタビューを快諾してくれた。大学が休校の土曜日、静岡市葵区の坂の上にある常葉(とこは)大学に日比野氏を訪ねた。


日比野秀男氏

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