【画像製作レポート】
三井記念美術館が所蔵する円山応挙筆《雪松図》(右隻・左隻)の写真を借用した。美術館指定の用紙「写真借用申請書」に必要事項を記入し、社印を捺して申請。しばらくして三井記念美術館から4×5カラーポジフィルム(カラーガイド付き)と「資料写真許可書」「請求書」が郵送されてきた。六曲一双のため、右隻・左隻の2点で一作品である。ポジフィルムの番号は、FUJIFILM CDUⅡ 33985(ALBFGA,ALBFFC)。デジタル画像にコピープロテクトをかけることが条件として付記されていた。
フィルムのスキャニングはプロラボへ。150dpi・20MB・TIFF、ポジフィルム2点で4,200円。出来上がりの画像にゴミが残っており、やり直しを依頼し今回初めてわかったことだが、プロラボのスキャニング作業工程にはゴミを取るという画像処理が組み込まれていた。どのような画像処理なのか、見た目のきれいさの陰に大事なデータが消去される可能性もあるだろう。修正箇所とその方法を記録した修正履歴を残す仕組みがあるといい。
iMacの21インチモニターをEye-One Display2(X-Rite)によって調整後、カラーガイド(Kodak Color Separation Guide and Gray Scale Q-13)をスキャニング(brother MyMiO MFC-620CLN,8bit,600dpi)し、そのカラーガイドを実物のカラーガイドに合わせて色を調整。そして画像カラーガイドと《雪松図》に写っているカラーガイドを合わせていった。左隻のポジフィルムが水平に撮影されていなかったため、時計回りに0.4度回転させてから、屏風の淵に合わせて切り抜いた。画像データは右隻、左隻ともにセキュリティーを考慮して電子透かし「Digimarc」を埋め込み、高解像度画像高速表示Flashデータ「ZOOFLA」によって拡大表示できるようにしている。
[2021年4月、Flashのサポート終了にともない高解像度画像高速表示データ「ZOOFLA for HTML5」に変換しました]
佐々木丞平(ささき・じょうへい)
京都国立博物館館長・(独)国立文化財機構理事長。1941年兵庫県姫路市生まれ。専門は日本近世絵画史。文学博士。学歴:1965京都大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業、1970年同大学大学院文学研究科博士課程修了。職歴:1970年京都府教育委員会事務局技術職員、1972年文化庁文化財保護部美術工芸課技官、1979年同課文化財調査官、1981年京都大学文学部助教授、1991年同大学文学部教授、1996年同大学大学院文学研究科教授、2000年4月同大学院教授・附属図書館館長、同年11月同大学大学文書館館長、2005年京都国立博物館館長・(独)国立博物館理事、2007年より現職。所属:美術史学会、美学会、18世紀学会。受賞:國華賞(1997)、日本学士院賞(1999)、Humboldt Research Award(2000)。主な著書:『円山應擧研究』(共著,中央公論美術出版,1996)、『文人画の鑑賞基礎知識』(共著,至文堂,1998)、『古画総覧 円山四条派系1〜6』(共編著,国書刊行会,2000〜2005)など。
円山応挙(まるやま・おうきょ)
江戸中期の絵師。1733〜95年。円山派の祖。丹波国桑田郡(京都府亀岡市)生まれ。農民の父丸山藤左衛門、母(篠山藩士上田氏の娘の説も)の次男。実名も応挙で「まさたか」。署名には氐(てい)、一嘯(いっしょう)、夏雲(かうん)、主水(もんど)、仙嶺(せんれい)を使用し、34歳から応挙。幼少から村内の金剛寺に奉公、十代前半で上京、呉服屋岩城に奉公後、玩具商中島勘兵衛の尾張屋で世話になり、17歳頃に狩野派の石田幽汀の門に入り、伝統画法を学ぶ。尾張屋では浮絵製作に携わり、遠近表現法を修得。30歳頃、中国人画家・銭舜挙(せんしゅんきょ)の花鳥図の模写で力量が広く知られ、蓮池院尼公(宝鏡寺)が召し抱え、皇室との関係が始まり、円満院門主祐常と交流、また豪商三井家との交流を深めた。外来の写実画法の影響を受け、山水、花鳥、人物など多方面に活動、博物学、実学の普及に伴い、写生画を確立、付立や片隈などの技法を用いた画風は門弟に継承され、日本画の近代化に貢献。代表作に《藤花図屏風》《保津川図屏風》金刀比羅宮表書院や大乗寺の障壁画など。
デジタル画像のメタデータ
タイトル:雪松図(右隻 左隻)。作者:影山幸一 。主題:日本の絵画。内容記述:円山応挙, 江戸時代天明期制作, 六曲一双(各縦155.7cm×横361.2cm), 紙本墨画金泥金砂子, 国宝。公開者:(株)DNPアートコミュニケーションズ。寄与者:三井記念美術館。日付:2009.11.6。資源タイプ:イメージ。フォーマット:Photoshop, 各9MB。資源識別子:FUJIFILM CDUⅡ 33985(ALBFGA, ALBFFC)。情報源:─。言語:─。体系時間的・空間的範囲:─。権利関係:三井記念美術館
参考文献
佐々木丞平「資料紹介 應挙関係資料『萬誌』抜粋」『美術史』111, Vol.31, No.1, p.46-p.60, 1981.11, 美術史学会
佐々木丞平「円山応挙の山水画について」『美術史』120, Vol.35, No.2, p.113-p.131, 1986.4, 美術史学会
佐々木丞平「絵画の背景―研究ノートより13 〔万物三遠ヲ意トスベシ〕―応挙三次元表現への軌跡―」『日本美術工芸』10月号第697号, p.24-p.30, 1986.10.1, 日本美術工芸社
佐々木丞平「絵画の背景―研究ノートより14 写生画普及の社会的背景―真写の時代―」『日本美術工芸』11月号第698号, p.24-p.31, 1986.11.1, 日本美術工芸社
NHK取材班『NHK 国宝への旅』第20巻, 1990, 日本放送出版会
佐々木丞平「日本絵画における写実と空間の問題」『哲学研究』第556号, p.34-p.79, 1990.5.20, 京都哲学会
『日本美術全集 第19巻 大雅と応挙 江戸の絵画III・建築II』1993.4.26, 講談社
『亀岡生涯学習市民大学 講義〔円山応挙の生涯と芸術〕』1993.10, 亀岡市・亀岡市教育委員会
図録『没後200年記念 円山応挙展』1994.1.15, 「円山応挙展」全国実行委員会
佐々木丞平・佐々木正子 著『円山應擧研究(研究篇・図録篇)』1996.12.10, 中央公論美術出版
佐々木丞平・河野元昭 編集『日本美術全集 第24巻 文人画と写生画 大雅/玉堂/応挙』1999.6.1, 学習研究社
木村重圭「円山応挙《雪松図屏風》(三井文庫)とその系譜」『美術フォーラム21』p.19-p.24, 1999.11.27, 醍醐書房
図録『円山応挙と三井家』2000.1, 三井文庫
図録『円山応挙〈写生画〉創造への挑戦 展』2003.9.13, 毎日新聞社・NHK
佐々木丞平・佐々木正子 編著『至宝 大乗寺 円山応挙とその一門』2003.9.13, 国書刊行会
橋本 治「その75 “終わり”の始まりとなるもの 円山応挙筆〔雪松図屏風〕」『ひらがな日本美術史5』p.14-p.25, 2003.9.25, 新潮社
『芸術新潮』(特集:円山応挙 写生の冒険)第55巻第2号, 通巻650号, 2004.2.1, 新潮社
星野 鈴『新潮日本美術文庫13 円山応挙』1996.11.8, 新潮社
辻 惟雄・小林 忠・河野元昭 監修『日本絵画名作101選』2005.3.20, 小学館
2009年11月