アート・アーカイブ探求

曾我蕭白《群仙図屏風》狂気なる自我──「狩野博幸」

影山幸一

2010年03月15日号




曾我蕭白《群仙図屏風》(上:右隻・下:左隻) 1764年, 六曲一双(各172.0×378.0cm), 紙本著色, 重要文化財, 文化庁蔵 無許可転載・転用を禁止
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蕭白と若冲の仕掛け人

 歴史に淘汰されずに残され、生き続ける絵とは、洗練された美しい絵だけではないと承知してはいるが、これほど異様で、赤・青・黄の原色をどぎつく強調した気色の悪い絵は少ないだろう。曾我蕭白(そがしょうはく)の代表作のひとつと呼ばれている《群仙図屏風》(重要文化財,文化庁蔵)である。蕭白のこの仙人たちの顔の表情はなんとも下品極まりない。どうしてこの奇怪な絵が残されてきたのか。どこが見所なのかわからない。しかし一旦見てしまったこの毒気のある絵は時間が経っても忘れられず、それどころか他の作品を見るときのひとつの基準となるような気さえしてくる。長年曾我蕭白を研究し、2005年には京都国立博物館で大規模な『曾我蕭白展』を企画、開催した狩野博幸氏(以下、狩野氏)にこの《群仙図屏風》の見方を伺ってみようと思った。
 狩野氏は2006年京都国立博物館から同志社大学へ転職し、現在は同大学の文化情報学部教授である。日本近世美術史(桃山時代・江戸時代)を専門とし、2000年に京都国立博物館で開催された「若冲展」を企画した若冲ブームの仕掛け人でもある。

狩野博幸氏
狩野博幸氏

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