奥村雄樹ワークショップ&展覧会 「くうそうかいぼうがく(青森編)」

| | コメント(0)
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。もう1月も後半になってしまいましたが、今年初投稿です。

00_0119title.jpgACACでは1〜3月にかけて『空間知覚』というテーマでワークショップをベースにした参加型プロジェクトを展開中です。1月9日、10日にその第1弾となる銅版画&豆本制作のワークショップ「小さな空間」をを実施しました。青森は棟方志功の生誕の地でもあり、版画が盛んなんですよね。こちらのワークショップの詳細はACACのブログにて報告しておりますので、そちらをご参照ください。
当該記事はこちら>>http://acacaomori.exblog.jp/13458720/
ものづくりのワークショップって面白いんだけど、つくることに夢中になってしまって、考えたり鑑賞したりする時間が意外ととれなかったりして、その辺のバランスはなかなか難しいです。

そして、先週末には東京よりアーティストの奥村雄樹さんをお招きし、「くうそうかいぼうがく(青森編)」というワークショップ&展覧会を開催しました。というか、展覧会は本日スタートしたところです。

このプロジェクトは一貫して身体に興味を持って作品を制作してきた奥村さんが、からだのなかについて自分だけでなく他人はどんなふうに考えているのか、あるいは想像するのだろうかという興味を探求し作品化しようと試みたものです。

具体的には、人体解剖図などをみたことがないであろう7歳以下の幼い子供たちに集まってもらって、簡単な導入のお話をし、その後画用紙に自分の体内を想像して絵を描いてもらいます。そして、子供たちが描いた絵とワークショップの様子をドキュメントした映像や写真を編集して、奥村さんがインスタレーションとして再構成します。

【プロジェクト概要】
講師:奥村雄樹(美術家/東京)
〔ワークショップ 01〕 国際芸術センター青森ギャラリーB
2010年1月15日(金) 10:00-11:30 原別保育園のこどもたちと
〔ワークショップ 02〕 空間実験室
2010年1月16日(土) 13:30-15:00 あおもりのこどもたちと
〔奥村雄樹レクチャー〕 空間実験室
2010年1月16日(土) 15:30-16:30 アーティスト自身による活動紹介

〔展覧会〕
「くうそうかいぼうがく(青森編)」奥村雄樹とこどもたち
2010年1月19日(火)−2月14日(日) 10:00-18:00
青森公立大学 国際芸術センター青森 ギャラリーB 


ワークショップの流れを以下写真とともにご説明します。
まず1日目は青森市内の保育園児たちがACACにやってきて朝からワークショップです。

01_0115explain.jpg ↑「からだのなかってどうなってるの?」ということで、 体内を考えるためのおはなしやデモンストレーション。リンゴやあんぱんを割ってなかを見せたり、スーツケースの中身を見せたり、内側を想像するように仕向けます。

02_115rinkaku2.jpg↑ひとりひとりからだの輪郭線をクレヨンできれいに取っていきます。

03_0115draw.jpg
↑自分のからだの輪郭のなかに、それぞれが思い描くからだのなかを描き込んでいきます。画材は水彩絵の具、ポスカ、クレヨンを用意し、それを自由に使って描いてもらいます。

05_0115photo.jpg↑完成したら写真撮影。これが後々展示の映像にも登場するのですが、まとめて出てくるとかなり面白いです。
お母さんが妊娠している子は、自分のからだのなかに赤ちゃんを描いたり、心臓が口のあたりにある子がいたりと、それぞれ特徴のある絵を描いていました。

04_0115blashup.jpg↑最後はみんなの絵を眺めつつ、ちょっとしたおはなし会。写真では欠けてますが左側に奥村さんがいて、お話ししてます。なぜか奥村さんを捉えている写真が少ないんですよね。別に不在性とか意識してるわけでもないのに。

この日は30人弱のお子様が集まりなかなかハードでしたが、無事ワークショップは終了しました。
それにしても、保育園では水彩絵の具は使わないようで、みんな普段使い慣れているクレヨンよりは水彩絵の具で絵を描く事に夢中になってしまった感がありました。


そして2日目は空間実験室という青森市内のオルタナティブスペースをお借りして公募で集まった市内の子供たちとのワークショップ。この日は吹雪でほんとにみんな来てくれるのか不安でしたが、なんとか参加者は集まりました。ちなみにこの日ACACの母体である青森公立大学はセンター試験の会場でごったがすということもあって、アウトリーチ型で決行することになりました。

06_0116explain.jpg07_0116explain.jpg↑この日もりんごや映像を使ってまずは趣旨を説明。子供の反応がとてもよくて面白いです。そして二日目だけあって奥村くんも説明が格段にうまくなってました。

08_0116draw.jpg
↑最初にクレヨンでベースとなる絵を描いて、そこに水彩やポスカで仕上げていこうという感じです。

09_0116draw_ashi.jpg↑上半身だけでは足らず、下半身まで描いてしまう意欲的な子も数人いました。こちらの子はからだのなかに人間がいっぱいいて色々仕事をしているような絵を描いてました。

10_0116photo.jpg↑雪のお外で作品を撮影!

11_0116lec.jpg↑ワークショップ終了後は奥村さんのこれまでの活動を紹介するトークも開催。"身体"や"穴"というキーワードが作品からもよく見えてきました。また、「実際に僕たちが知覚していると思っていることが、実はただそう見えているだけなのではないか」、という疑問などをシンプルで構造的な映像作品から色々感じました。



そしてワークショップ終了後2日間の準備期間を経て展覧会は無事スタート!
以下ハンドアウト用の解説より引用です。


空想(くうそう);現実にはあり得るはずのないことをいろいろと思いめぐらすこと。想像の一種で、観念または心像としてあらわれる精神活動またはその所産をいう。
解剖学(かいぼうがく);生物体の一部または全部を解き開いて、その構造・各部間の関連を探求する学問。

広辞苑 第五版より



文字通り"くうそうかいぼうがく"を捉えると、ありようが未知の身体の中の状況に思いを巡らせながら、身体の具体的な構造や関係を探求する学問ということになる。

私たちは誰も自分のからだの中を実際には本当は見たことがないはずなのだ。しかしながら医学や技術の発展により、人体解剖図やCTスキャン・MRIなどを介してからだの内部を描いたものや投影した像を目の当たりにしている。そして何となく具体的な感覚を伴わずに、からだの中を知っている気になっているのだ。

では、まだ人体の解剖図などを見たことがないであろう幼いこどもたちは、自分のからだのなかをどんなふうに考えているのだろうか?こどもたちが想像を巡らせて各自のからだの中を絵にしてみたら、それはきっと未知の世界を描く空想科学(SF)のように刺激的な状況が生じるのではないだろうか。
一貫して身体に言及する作品を制作してきたアーティスト奥村雄樹はそんなことを思考し、今回のワークショップ・プロジェクト「くうそうかいぼうがく(青森編)」を実施するに至ったのだ。

この一連のプロセスを経て、こどもたちが描いた絵と、ワークショップのドキュメント映像を用いて奥村がインスタレーションとして再構成したものが、この展示である。

服部浩之

12_0119exhi.jpg13_0119exhi2.jpg14_0119exhi3.jpg
ということで、展覧会は2月14日までです。青森県立美術館&十和田市現代美術館のラブラブショーと合わせてご来場ください。

奥村さん、お疲れさまでした!

ブロガー

月別アーカイブ