「デザニャーレ」展示風景 井の頭自然文化園[撮影:artscape編集部]
2024年がもう終わろうとしているなんて信じられない……。毎年同じようなことを言っていますが、今年はいつも以上にそう思います。夏がいつまでも終わらなかった。紅葉はまだかまだかと思っているうちに、なんとなくあまり美しくない枯葉が足元に溜まるようになった。そして、気付けばもう年の瀬。
今年のartscapeのビッグイベントは、なんといっても3月のリニューアル。月2回から毎日の更新になったことは大きな変化でした。デザインも変わって、より読みやすくなったというお声を多くいただいております。今後もより良いサイトを目指していきます。
多言語の記事
記事の種類は「ニュース」「レビュー」「読みもの」の3つに分かれました。「読みもの」には以前の「キュレーターズノート」「スタディ」「トピックス」などが総括的に入っています。さまざまな種類の記事を扱えるようになり、今秋以降、英語と中国語のページにも挑戦しています。
日本語+英語の記事
・佐藤麻衣子|感覚がミュージアムをアクセシブルにする──視覚障害当事者が携わるオランダの建築模型(2024年09月02日)
https://artscape.jp/article/20498/
・Maiko Sato|The senses make museums accessible ─ Dutch architectural models developed with a visually impaired(2024年10月16日)
https://artscape.jp/article/24272/
中国語(繁体字)+日本語の記事
・陳思宇|「dialog() 亞洲生成藝術展2024」vol.2──台北站直擊(2024年12月11日)
https://artscape.jp/article/27552/
・陳思宇|「dialog() Asian Generative Art Exhibition 2024」vol. 2──台北展レポート(翻訳:岩切澪)(2024年12月11日)
https://artscape.jp/article/27566/
「dialog() Asian Generative Art Exhibition 2024」展が東京、台北、ソウル、北京と旅する展覧会で、このツアーを現地のライターの方にレポートしていただこうというのがアイデアの発端でした。日・英バイリンガルではなく、多言語記事の展開を試み、読者も執筆者の枠もひろがるのではと思います。情報の共有ということ以外に、私たちのアートシーンにあるテーマ、課題、思考や実践は、ほかの地域の誰かが向き合っていることと根が同じだと思えることは少なくありません。いま同展のソウル会場のレポートを編集しながら実感しています。ネットを介して発表されているデジタルアートであれば地域の違いはないのかと思っていたら、展覧会としてのリアルな場所があり、オーガナイザーが変われば、それぞれの土地のキャラクターやさまざま背景が浮かび上がってきて、興味深いです。さきに公開した佐藤麻衣子さんの記事の英語版はご本人に書いていただいています。テキストのなかに登場した方々とも記事を共有できたときいています。
Xで始まった「#artscapeメモランダム レコメン展」
以前「レビュー」を執筆していただいた(現在は隔月で「遊歩録」を執筆中)村田真さん、飯沢耕太郎さんによる「レコメン展」を12月からスタートさせました。これは、artscapeのXのアカウントで、お二人に見てきたばかりの展覧会をおすすめしていただくというものです(都合上、公開までに数日はいただいています)。飯沢さん、村田さんがどんな展覧会に注目していらっしゃるのか、気になる方はぜひチェックしてみてください。まだ終了していない展覧会を取り上げていただいているので、早めにチェックしていただければ駆けつけることができるはず。これは読者の方からの声をもとに始まった企画です。
アーティストの応答
そして、年に一度、アーティストの方々に寄稿していただく恒例企画、今年はリニューアルのタイミングにあわせて3月に配信した「8人のアーティストの移住と時間割」とあわせて2本になりました。
作品はいったん展覧会という公の場に出たら、作家のもとから離れ旅に出ます。さまざまな目で読み解かれ、作家の意図しない見方もされるでしょうが、そこが面白いところ。だからというか、artscapeではときに複数のレビュアーが同じ展覧会について異なる視点で論じることがあります。さて、作家の意図を言い当てた批評がいい批評なのでしょうか? それってお見事と言いたくなるときもあれば、退屈でもあるかもしれません。どうであれ、観客(レビュアーもその一人)が受け取ったものが観客にとっての作品になります。たとえそこにたどりつくまでの道が入念に計画されていても、旅は計画どおりにはすすみません。鑑賞する側もときには会場にある作品のなにかを見落としたり、誤解したりすることもあるでしょう。作家からの批評に対する意見や感想をきくことは、単に正解を得ようとしたり、誤解を解くためだけのものではない、「レビュー」をもとにした著者とアーティストの発見と創造の場が生まれることになるかもしれません
今回の「6組のアーティストから、レビューへの応答」では、最近よく登場される作家の方に、ずばりレビューの記事を読んでどう思ったか、お聞きしてみたものです。レビュアーが放った球を直球、変化球、魔球でみごとに打ちかえしてくださいました。元のレビューと一緒にお読みいただければ、楽しさ倍増だと思います。
動物園・水族園のインハウスデザイナー
さて、冒頭の写真について少し。銀座MMMで開催中の「MMM×artscape ミュージアムグッズフェア vol.1」に関連して、12月6日にトークイベント「かわいいだけじゃない! 生きものをめぐるグッズデザイン 〜動物園・水族館のミュージアムグッズから考える」が開催されました。ゲストは大澤夏美さんと葛西臨海水族館のインハウスデザイナー・齋藤未奈子さん。齋藤さんは大澤さんが強力に推している「デザニャーレ」に参加されています。東京都内の4つの動物園、水族館のなかのデザイン室の仕事にフォーカスをあてたとても楽しい展覧会。写真はその会場風景です。生き物をテーマにした園のデザイン室は教育普及活動の一部で、広報と教育の二股かけた部署です。人を惹きつけるデザインというだけではなく、科学的に間違っていないことも大事。デザイン室を再現したコーナーにあるゲラの朱字が「ならでは」で、見入ってしまいました。いつのまにか世の中の「デザイン」そのもののあり方まで考えてしまいました。この展覧会は、好評につき、来年1月31日まで会期が延期されています。近郊の読者の方はぜひおでかけいただき、トークイベントのアーカイブで裏話を聞いていただけたら、よい冬休みになること間違いなしです(井の頭自然文化園は年明けは4日から開園しています)。
それでは、みなさま、よいお年をお迎えください。来年はartscapeは30周年を迎えます。今後ともご愛顧くださいますよう、よろしくお願いいたします。(f)