会期:2026/02/12~2026/03/26
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー [東京都]
公式サイト:https://www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/jp/00000851

ポーランドのアーティスト、ヤン・レニツァの企画展「ポーランドの巨匠 ヤン・レニツァ ポスター、アニメーション、イラストレーション、舞台」がギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催された。会場1階にはポスター、地下1階にはポスターとそのラフスケッチに加え、アニメーション、絵本、風刺画などの原画が展覧された。また、2階ではアニメーション作品『ハウス』(1958)、『ラビリント』(1963)がスクリーン上映されていた。

「ポーランドの巨匠 ヤン・レニツァ ポスター、アニメーション、イラストレーション、舞台」会場風景[筆者撮影]

アニメーション作家としても著名なレニツァは、日本でも1965年までに代表作の『ハウス』や『ラビリント』が研究会や草月のアニメーションフェスティバルで紹介されてきた。両作ともに写真や図像の切り絵アニメーションであり、ポスターに見られるレニツァ自身が描いた豊かな筆致や彩色の仕事にあらためて驚かされる。

戦後のポーランドは欧州のストリートポスターの伝統に加えて、社会主義化した国家の検閲や冷戦による流通制限を理由に外国の映画ポスターを作り直したり、物資不足から多色刷りや写真図版が不要な抽象的なイスラトレーションによって広報作品のイメージを表現したりと、ポスターデザインを独自に発展させてきた歴史がある。

その中心人物だったヘンリク・トマシェフスキを師とするレニツァの仕事にも、大ぶりな筆の抑揚や色を効果的に扱うドローイング表現が見られる。彼はトレンド分析やマーケティングリサーチの実践者でもあり、ポスターが貼られる街の様子に通じ、ライバルとなるポスターとの差別化を図りながら色合いなどの表現を変化させていったという★1。会場にはレニツァが手がけたフェデリコ・フェリーニや新藤兼人の映画ポスター、ミュンヘンオリンピックのスポーツポスターなどが展示され、彼が若くして大きな仕事に携わっていたことが窺える。

「ポーランドの巨匠 ヤン・レニツァ ポスター、アニメーション、イラストレーション、舞台」会場風景[筆者撮影]

アニメーションや実験映像においては、レニツァの第一作である『Nagrodzone uczucia(報われた想い)』(1957)から『ハウス』までの7作品を、クリス・マルケルとも協働したフィルムメイカーのヴァレリアン・ボロフチクと共作している。初期作は写真や図版のコラージュによるシュルレアリスティックな印象が強いのに対し、70年代にはポスターに見られるような自らのドローイングキャラクターによる貼り絵アニメーションを展開している。

本展では最初期の仕事として1946年に雑誌掲載された風刺画から90年代に出版された絵本までが紹介され、戦後から現代にかけてを生き抜いた画家の仕事が、デザイン、イラストレーション、アニメーションと多岐にわたる多様さを持ったことが見通せる構成となっていた。

鑑賞日:2026/03/02(月)

★1──「つまり、街の通りを良く知っていたのだ。周囲の状況、他のポスターの傾向なども知りつくしていた。(中略)周囲が愛らしかったり、エレガントであったり、またシックな雰囲気であれば、私の表現は激しく、時には荒々しくさえなった。同様に、街がカラフルであれば、私は黒と白といったモノクロのポスターで勝負した。」
(『アイデア』No.229、誠文堂新光社、1991年11月号)