
会期:2026/04/18~2026/06/21
会場:三井記念美術館[東京都]
公式サイト:https://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
とにかく、華やかだった。そもそも西洋では食卓に対する考え方が違うのだろう。テーブルに大きなセンターピースやポプリ壺、燭台、花などを飾る生活様式が根付いているのだ。ホームパーティーを開く習慣があることも影響している。そうした艶やかな食卓文化を、陶磁器の一端を通して見ることができた。本展は19世紀半ばから20世紀半ばまでの西洋陶磁器に焦点を当てた内容である。デザインの潮流としては、ロココからジャポニスム、アール・ヌーヴォー、アール・デコへと移ろいゆく怒涛の100年間だ。
最初に展示されていたのは、欧州で初めて磁器焼成に成功したドイツのマイセン窯である。特に大型作品《ポプリ壺「科学」》(19世紀後半)には圧倒された。日本でも万国博覧会出品用などに大きな壺は作られてきたが、まず装飾に対する概念が違う。同作品は壺の蓋に女性像を頂き、周囲を色鮮やかな花や鳥、昆虫で立体的に彩り、さらに男女が戯れる田園風景の窓絵が設けられている。ロココ様式の特徴をふんだんに取り入れているせいなのか、言わば装飾過多なのだ。いや、これこそが食卓を華やかに演出するのに欠かせない要素だったのだろう。生花を生ける代わりに装飾的なセンターピースを飾ったという解説が別作品にあり、なるほどと思う。19世紀はそんな装飾過多な壺やティーセットなどが続くのだが、20世紀に入ると途端にデザインが一変する。ジャポニスムが火付け役となり、アール・ヌーヴォーが到来する時代となるからだ。同じ花や植物で陶磁器を彩るにしても、シンプルな絵付けへと移行する。このようにひとつの窯を通して見ても、陶磁器のデザインの移り変わりが手に取るようにわかり、大変興味深かった。
さらに国別に、フランスはセーヴル、イギリスはウェッジウッド、イタリアはジノリ、デンマークはロイヤル・コペンハーゲンなど、いまも知られている名窯の陶磁器の展示が続く。各窯に特徴や得意技法はありつつも、時代の大きな潮流のなかでそれぞれが影響し合い、華やかな西洋陶磁器の文化を形作っていたことが伝わる。それは日本や中国、朝鮮半島で生まれた東洋陶磁器とは明らかに異なる顔を持っている。現代ではモダンデザインという括りのなかで、洋の東西の違いが不明瞭になってきている部分もあるが、こうして西洋陶磁器への理解を深めることで、両者の背景の違いをより鮮明にうかがい知ることができた。
鑑賞日:2026/04/21(火)