会期:2026/04/03~2026/05/16
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京都]
公式サイト:https://www.dnpfcp.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000854

今年も東京TDC賞の受賞作品を興味深く鑑賞した。印象的だったのは、グランプリの「Futura®100 Multiscript」である。世界的なサンセリフ書体として知られる「Futura®100 Multiscript」は、昨年、これまでで最多となる12スクリプトを展開。さらに今年、11スクリプトを追加し、今後は世界人口の90%以上をカバーする多言語への対応を予定しているという。まさに書体の世界標準化だ。注目したいのは、アラビア語やヘブライ語、タイ語、ミャンマー語など、非西洋系スクリプトにも対応したことである。アルファベットの仲間ではないこれらの文字への展開は、確かに困難を極めたのではないかと想像するが、しかし日本人の目からすると、まだ可能な領域のようにも思える。気になるのは、当然、日本語への展開だ。「90%以上をカバーする多言語」のなかに、日本語も含まれているのだろうか。実は中国語(簡体字)スクリプトの開発はすでに進んでいるとのことなので、日本語の漢字(新字体)はクリアできる見込みが高い。残るは仮名文字となるが、案外、そちらの方が展開は容易だろう。「Futura®100 Multiscript」がどのように日本語を攻めてくるのか、今後、目が離せない動きといえる。


展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー[撮影:藤塚光政]


展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー[撮影:藤塚光政]

ほかにタイプデザイン賞を受賞した「百千鳥」も、バリアブルフォント技術による美しい縦長・横長の日本語フォントを完成させたという点で注目したのだが、それより会場で一際目を引いたのは、RGB賞を受賞した映像作品「落書」だった。これは早稲田大学とカルフォニア大学ロサンゼルス校との共同連携事業「柳井イニシアティブ」で制作された、日本文学とアニメーションのコラボレーション作品である。詩人の高柳誠の詩「落書」を題材に、高柳本人が朗読し、アニメーション作家の折笠良が監督を手がけたもので、映像を眺めるうちに、独特の世界観にぐいぐいと引き込まれてしまった。詩を織り成す言葉の力も強かったのだが、その魅力を一層広げる無機質なモノクロームのアニメーションも無駄がなく、思わず鳥肌が立った。こうした良質のアニメーション作品を今後もさまざまなエンターテインメントやイベントなどの場で観たいと切に思う。


展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー[撮影:藤塚光政]

鑑賞日:2026/04/21(火)