会期:2026/04/25~2026/07/26
会場:東京都現代美術館 企画展示室1F/3F[東京都]
公式サイト:https://ericcarle2026-27.jp/

絵本『はらぺこあおむし』の青虫は、そういや、何の幼虫なんだろう。最後に色鮮やかな蝶になるのだから、アゲハ蝶かなと想像し、小学生の頃に飼っていた幼虫をふと思い出す。当時、自宅の庭に植っていたミカンの木にアゲハ蝶の幼虫がたくさん寄ってきたことから、飼育して観察したことがあったのだ。そもそも私は虫が苦手だったにもかかわらず、観察するうちに幼虫がだんだんかわいく思えたのだから不思議である。初めは黒いゲジゲジした姿をしている幼虫は、脱皮して艶のある緑色に変わり、葉をモリモリ食べ、徐々に大きくなり、サナギとなった。ただしどんなに楽しみに待っても、羽化する瞬間はついぞ見ることができなかった。いま、思えば、あれがリアルなマイファースト“はらぺこあおむし”だったのだ。


エリック・カール『はらぺこあおむし』(部分)1987年版 表紙 Collection of the Eric and Barbara Carle Foundation. © 1969, 1987 Penguin Random House LLC.

思い出話が長くなってしまったが、『はらぺこあおむし』の青虫は、しかし空想上の生物なので何の幼虫なのかは特定されていない。そりゃそうだ、リンゴやナシ、スモモ、チョコレートケーキ、アイスクリームなども食べてしまうのだから。日本語版刊行50周年を記念した本展は、米国マサチューセッツ州にあるエリック・カール絵本美術館との共催とあって、『はらぺこあおむし』ファンにはたまらない充実した内容だった。全ページ分の原画が展示されているほか、カールがパンチ穴をたくさん空けているうちに、不意にこの絵本を着想したとか、原案のダミーブックではみみずが主人公だった(最後はただ太っておしまい)など、興味深い逸話も盛り込まれていた。また、ほかの絵本原画やグラフィックデザイナー時代のポスター作品などもたっぷりと展示されていて、カールの生涯を追って見ることができた。自ら色を塗り重ねた紙を切り貼りするという独特の制作工程やアトリエ風景も展示や映像で眺めることができて、すっかり堪能できたのである。


「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」第1章展示風景


「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」第2章展示風景

また、晩年、カールは何度も来日していた親日家だったことも明かされている。かつて日本での展覧会に向けて制作された特別版『はらぺこあおむし』の絵もあり、これがなかなかお宝的な作品だった。私のように虫が苦手な人も含めて、『はらぺこあおむし』ほど多くの人々に愛されている青虫はいないだろう。


「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」第4章展示風景

鑑賞日:2026/04/28(火)