
会期:2026/08/28~2027/01/11
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2[東京都]
公式サイト:https://www.2121designsight.jp/program/hojoki/
人はそんなに小さな建築が好きなのか。確かに超高層ビルやマンションの林立、都心の再開発などが止まない現代社会だからこそ、その反動から自らの身の丈に合った建築を求めたくなるという心理はわからないでもない。近代建築の父であるル・コルビュジエも、地中海を望む南仏カップ・マルタンに休憩小屋を建て、晩年を過ごしたことで知られている。結局、大きな建築は国家繁栄や経済性などのためであり、対して小さな建築は個人のささやかな望みということなのだろう。

会場風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー2 撮影:木奥恵三
本展は、鴨長明の名随筆『方丈記』に記された「方丈の庵」を起点に、現代における生き方への問いをテーマとした企画展である。方丈の庵とは一丈四方の住まいのことで、現代の面積に置き換えると約9㎡、四畳半程度の空間である。長明は晩年に都から離れ、山に方丈の庵を建てて隠遁生活を送ったのだが、そこには厭世的な心情が大きく働いていた。隠遁生活は、心は自由でも、孤独と不便が付きものである。つまり暮らしの不自由さをある程度受け入れてでも、世俗から離れたい気持ちが強かったということだ。会場内には長明の方丈の庵の再現を試みた《非実在空間としての方丈の庵》をはじめ、参加作家によるさまざまな解釈の下での方丈の庵が建ち並んでおり、なかなか見応えがあった。中には靴を脱いで内部へ入れる作品もあり、体験型の楽しい内容となっていた。

会場風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1 《非実在空間としての方丈の庵》 撮影:木奥恵三

会場風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー2 左:山口晃《螺庵》 右:2m26《living with》 撮影:木奥恵三
しかし、私自身、小さな建築に憧れるかどうかというと、今のところそうした気持ちはない。というのも、どうしても不便さが目に付いてしまうからだ。広すぎず、狭すぎず、ほどほどの面積で、雨風をしのぐだけでなく温度や湿度をちょうどよく保てて、清潔に快適に暮らしたいというのが希望である。都市から離れた山里で隠遁生活を送る勇気などまったくないのだ。たぶん多くの現代人が同じような考えなのでは……とここまで思案して、ふと浮かんだのはいわゆるミニマリストである。ミニマリストとは必要最低限の物だけで豊かな暮らしを送る人のことをいうが、つまり彼らこそ現代における『方丈記』の精神を体現しているのではないか。方丈の庵という住まいの狭小さばかりに目が向いていたが、自分にとって本当に必要な要素だけに削ぎ落とすという行為は、住まいの狭小さも物の少なさも同じなのでは……という考えに至り、本展のテーマがようやく腑に落ちたのである。

会場風景 21_21 DESIGN SIGHTサンクンコート 正田智樹+竹中工務店+veig《蓑庵 マウン庭》 撮影:木奥恵三
鑑賞日:2026/08/29(土)