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学芸員レポート
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アノコザ
CAAK:Center for Art & Architecture, Kanazawa/カーク
金沢/鷲田めるろ(金沢21世紀美術館
 3月の半ば、「アートネットワークおきなわ(ano)」が企画する「アノコザ」という展覧会を見に沖縄市を訪れた。「アノコザ」は、主に沖縄市や那覇市から17組のアーティストが参加し、沖縄市の中心となるゴヤ十字路に隣接する商店街の店先や、空き店舗、駐車場などを使って一週間にわたり実施された。基地の街、沖縄市は「コザロック」の伝統があり、昨年ゴヤ十字路にオープンしたミュージックタウンも評価されて、今年3月、金沢市、近江八幡市、横浜市とともに文化庁より「文化芸術創造都市」として表彰されている。
「アノコザ」本部
福長香織展示
ゴヤ十字路とくすの木通り
駐車場で行なわれた野外上映会
上から
「アノコザ」本部
福長香織展示
ゴヤ十字路とくすの木通り
駐車場で行なわれた野外上映会
 「アノコザ」は、一昨年より、沖縄市で中村政人が行なっているワークショップ「コザ/キャッチ&リリース」を元に実現した。これは、街を歩き回り、キャッチしたものを、アーティストの眼と手を経て、再び街にリリースしようというものである。このワークショップに参加したアーティストの福長香織によると、ワークショップ参加者のあいだで、それぞれがキャッチしたものの交換が起こったという。ある参加者がキャッチしたものに、別の参加者が面白さを発見し、アイディアを付け加えたり、あるアイディアに、別の参加者が情報を付け加えたり。例えば、普段、ハローワークに勤めている大川無は、もともとアーティストだったわけではなく、ワークショップの参加者だった。大川は園部享弘と一緒に、シャッターの閉まっている空き店舗に貼られた「貸」や「空」というサインに着目し、「空」を「そら」と読み替えて、そらの写真や絵をその上に貼るという作品を展開した。これも当初は別の参加者がキャッチした「空」のサインの写真からスタートしているという。また、石を使った彫刻を主に制作している福長は、コザ十字路から伸びる「くすの木通り」拡張のために、伐採されたくすの木の廃材を使い、インスタレーションを制作した。これも最初は別の人がキャッチした情報だったが、福長を経て、街の人の記憶をとどめる作品となった。開発と街の共有の記憶のあいだで、特にどちらか一方の立場に肩入れするわけでもなく、ただまなざしを向けるという作品で、印象に残った。また、コミュニティFM「FMコザ」の花、ラッパーのさとまん、juru*yなどミュージシャンと一緒に展覧会を実施しているのもコザらしい。中村政人も展覧会全体を仕掛けながら、自らもアーティストの一人として参加している。格安で借りたビルをリノベーションし、今後、氷見や水戸、大館、金沢など他の地方都市と繋がるレジデンスとして継続的に運営する計画「Zプロジェクト」を発表した。また、私自身は見ることができなかったが、最終日には、駐車場のパーキングタワーの外壁を使った映像プロジェクションが行なわれた。街の人たちとの反省会でも、特にこの上映会は継続したいとの声が強かったとのことである。アーケード街は、訪れる人にはわかりにくいが、7つの商店街に分かれている。これらの商店街どうしは、組織が別であり、一緒に何かを実施することはあまりなかったそうだが、「アノコザ」に参加、協力することで、商店街を超えて顔を合わせる契機となったという。
 アノコザのネットワークがベースとなり、沖縄市にアートの拠点が定着することを期待したい。この秋には、那覇で全国アートNPOフォーラムも開かれ、前島アートセンターは3年ぶりに「WANAKIO」を開催する予定だ。牧志の市場近くには新しく「おきなわアートセンター」も活動を始めている。沖縄が面白い。

ano week in KOZA アノコザ
会期:2008年3月15日(土)〜22日(土)
会場:沖縄県沖縄市(コザ)・コザ商店街連合会エリア、銀天街商店街エリア

学芸員レポート
CAAK
CAAKの拠点、寺町の町家
 2007年秋金沢にて、美術と建築を横断しながら開かれた議論と交流の場をつくることを目指し、CAAK (Center for Art & Architecture, Kanazawa)が活動を始めた。元SANAAスタッフで金沢21世紀美術館の設計を担当し、現在は金沢で設計事務所を開く吉村寿博、仙台の阿部仁史アトリエでいくつかの住宅を担当したあと金沢で設計を行なう林野紀子、金沢出身で隈研吾事務所などを経て東京と金沢で事務所を開くことになった松田達ら若手建築家と、金沢21世紀美術館キュレーターである私が中心メンバーとなり、約10名のスタッフで運営を行なっている。
 設立のきっかけは、同年に金沢21世紀美術館が主催したアトリエ・ワン「いきいきプロジェクトin金沢」であった。半年間にわたって金沢の街をリサーチするというプロジェクトの性質上、期間中は美術館から徒歩5分の一軒家を借り、「いきいき荘」と名付けて拠点とした。毎週末、過密なスケジュールを縫ってアトリエ・ワンの塚本由晴と貝島桃代が交代で来沢する度、この「いきいき荘」でパーティを行ない、恒例となった。そもそもは、金沢工業大学や筑波大学、東京工業大学など、プロジェクトに参加した学生たちが経済的理由から自炊をすることから始まった「いきいきパーティ」だったが、金沢でのリサーチが進むにつれ、リサーチを通じて知り合った人たちを招き、新たな交流の場として機能し始めた。当時塚本と貝島は頻繁に渡航しており、来沢の度にイスタンブール、ナイジェリア、北京など、その一週間の間に彼らが訪ねたさまざまな都市の様子を画像で見ながら、建築家の目線でレポートしてもらえるという特典も定着した。
 スライド・レクチャー付き「いきいきパーティ」は週末の定番となり、プロジェクト関係者、美術関係者、建築関係者など入れ替わり立ち替わり、毎週30人程の参加者が集まるようになった。
 美術館主催のプロジェクトが終了後、この人の繋がりを活かすべく、「CAAK」という美術館からは独立した任意団体を設け、活動を継続させることとした。スライド・レクチャー付き「いきいきパーティ」を踏襲し、CAAKは設立以来5カ月間で9回のレクチャー&パーティを行なった。建築批評家の五十嵐太郎、「学芸員レポート」でもおなじみのACACの日沼禎子、建築家の新堀学、「アノコザ」の中村政人などがレクチャラーとしてCAAKを訪れた。テーマは特に限っていないが、自ずと「リノベーション」「アーティスト・イン・レジデンス」「街づくりとアート」などがキーワードとなってきていると感じる。
 金沢21世紀美術館が開館してから3年、最近金沢では美術館や大学を飛び出して「オルタナティブ」なアート活動ができる場を創設しようという動きが散見される。このような動きが、繋がりながら街全体に広がりつつあるように思う。
 また、CAAKはアーティスト・イン・レジデンスも行なっており、イスラエル/オランダのアーティスト、ラム・カツィールや、「フォトモ」の糸崎公朗が滞在した。糸崎は滞在中、金沢をモチーフとした作品を制作し、現在金沢21世紀美術館にてそれらの作品を含めた個展を開催中である。
 CAAKは、NPO法人「金澤町家研究会」の協力を得て、4月より金沢市寺町の築80年の町家に移転した。「いきいき荘」が住宅街の中の民家だったのに対し、商店街にあり、広い土間で以前陶器店が営まれていたという寺町の町家は、街との繋がりが圧倒的に強い。イヴェントを行なっていると、会場全体が通りから見通せ、商店街を通る人が覗き込んでゆく。また、長年この場所に馴染んできた町家の建物がどのように使われるのか、商店街や近隣の人の関心も強い。
 町家の空間的ポテンシャルに助けられながら、開かれた場を継続してゆきたい。
CAAK CAAK
左:建具などの修理
右:レクチャー

●CAAK: Center for Art & Architecture, Kanazawa
URL=http://www.caak.info

[わしだ めるろ]
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