村田真/酒井千穂 |
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11/1〜11/5 |
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多摩川アートラインプロジェクト:アートラインウィーク2008
11/1〜9 東急多摩川線全7駅[東京] |
先週は鶴見線、今週は多摩川線。最近にわかに鉄道駅に作品を設置する試みが増えている。なにしろ「駅から0分」だし、たくさんの人に見てもらえるし、ツッコミどころ(作品のモチーフ)も多そうだし、アーティストにとっては理想的な展示場所かもしれない。が、「作品」としてちゃんと見てもらえるかどうかは期待できないが。多摩川駅の階段の照明を虹色に変えた逢坂卓郎の《虹の階段》も、沼辺駅の改札口に壁画を描いた堂本右美の《記憶の中で》も、「なんかふだんとは違うなあ」と気づいてもらえればいいほうで、きっと大半の乗客は気づきもせずに通りすぎるだけだろう。それでも人の流れが圧倒的に多いから、100人にひとりでも「おや?」と思えば、数百人の心に止まることになる。多摩川駅の近くの公園では、関根伸夫の《位相―大地》の40年ぶりの再制作をはじめ、フロリアン・クラールや北川貴好らの大がかりなインスタレーションが繰り広げられ、それはそれで見ごたえあるのだが、やはりたくさんの人が行き交うなかに作品を放り込んだほうがおもしろい。
[11月1日(土) 村田真] |
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さかえdeつながるアート in 上郷・森の家
11/1〜3 上郷・森の家[東京] |
BankARTの出張スクール(横浜市18区にBankARTスクールが出張して講座を開くという、例によって無謀な試み)で初めて栄区を訪れる。「さかえdeつながるアート」とは、横浜トリエンナーレにあわせて市内各所で行なわれるアートイベントのひとつ。北川純や生意気らが参加したのだが、ほかにも映画や紙芝居やアート市やワークショップやバーベキューなど盛りだくさんの企画で、なんだかピントが合わせづらいのだった。まあ見に行く人にとってはそのほうが楽しいけど。
[11月3日(月) 村田真] |
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フェルメール展
8/2〜12/14 東京都美術館[東京] |
9時20分に到着。先月より混んでいるが、まだ並ぶほどではない。地階を飛ばし、フェルメールのフロアへ直行。風景画の《小路》を見ていて思ったのは、これってほかの室内画と同じ構図だってこと。つまり、右側に画面に平行の壁面を描き、左側に奥行きを感じさせる斜めの線を入れ、下に水平面を見せる。そして壁には矩形の窓(室内画では画中画や地図)をうがつ。これがフェルメールの基本的な空間構成であり、その上にテキトーに人物を配置するだけ。結局フェルメールがいちばん描きたかったのは「壁」だったという結論だ。10時30分に出たら、館内に列ができ、入場まで20分待ちだという。
[11月5日(水) 村田真] |
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アート・オブ・アワ・タイム
9/27〜11/9 上野の森美術館[東京] |
高松宮殿下記念世界文化賞の20周年を記念して、絵画・彫刻部門の受賞者41人の作品をかき集めたもの。第1回のデ・クーニング、ホックニーから、今年受賞のリチャード・ハミルトン、カバコフ夫妻まで大御所がそろう。が、それだけに、作品は国内所蔵の小品が多くなってしまうのはしようがないか。ダニ・カラヴァンやブルース・ナウマンは映像だし。
[11月5日(水) 村田真] |
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事の縁
10/18〜11/8 旧坂本小学校[東京] |
学校の教室を1作家1部屋ずつ使った展覧会。その成り立ちやテーマについてはおいといて、気になった作品をいくつか。教室の黒いカーテンを開けると、内部に吊るしたカーテンに映像を映したり、映像にカーテンを映し出したりした野沢裕の作品。「フェルメール展」を見たばかりのせいか、17世紀オランダの室内画を思い出す。教室の四隅に扇風機を置き、中央で紙クズがゆらゆら揺れるのを廊下から眺める高宮宙志の作品は、空き教室の寂寥感を漂わせる。階段の踊り場の壁に、遊具で遊ぶ子どもをコマ落としで映写した赤坂有芽の映像は、遠い記憶をくすぐる。黒板の上から水を流したり、床にジェル状の洗剤をぶちまけた岩井優のインスタレーションは、悪ガキが学校でやりたくてできなかったことを、いまごろアートを口実にやってる感じ。さすが芸大、おもしろいやつがいる。
[11月5日(水) 村田真] |
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東京ミッドタウン・アワード2008受賞作品展示
10/23〜11/3 東京ミッドタウン プラザB1Fメトロアベニュー[東京] |
東京ミッドタウンの主催するアートコンペの第1回。テーマは「ジャパン・バリュー」で、応募478組のなかから3人が入選、ミッドタウン地下の通路のショーウィンドウ内に展示された。パッと見、めだつのは、数百個の円形の鏡の時計にクジャクの羽根をつけた小松宏誠の《求愛しつづける時計》。鏡だから反射するし、秒針につけたクジャクの羽根がチコチコ動くからだが、遠くからだと単なる抽象的なパターンにしか見えない。裁断前の1万円札に自分の顔を刷り込んだ太湯雅晴の《ASIAN NOTE》は、遠目にはめだたないものの、近寄ってみると思わず見入ってしまう。やはり札の具体性は強い。桝本佳子の《pottery》も一見ジミだが、陶器に城や川や橋などがついていて、風景画ならぬ風景陶器になっている。どれも一長一短で、約160倍の激戦を勝ち抜いたわりにはもう一歩って感じ。グランプリは該当作品なし、というのは残念ながら納得できる(準グランプリは桝本)。
[11月5日(水) 村田真] |
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