97年の大作《エクス・イット》は、大中小100個の棺が並び、その一つひとつから若木が伸びているというインスタレーションである。それぞれ、男性、女性、子どもの棺を連想させ、世界中で起こっている悲劇を思い起こさずにはいられない。が、「人の死は悲しいけれど、土に還って新しい命を生むことができる」という肯定的な作品なのだと、オノ自身が語っていたように、鳥のさえずりが聞こえる明るい展示室には、すがすがしい空気が満ちていた。
展覧会に先立ち、合同記者会見に出席したオノは、にこやかで自信に溢れていた。「私はもう70歳ですけど、何も恐いものはありません。人間は知恵を出し合って、自分たちを滅ぼすようなことはしないと確信しているの。願い続ければ、いつかきっと現実になるのよ」。どこまでも「Yes」の人、肯定することの強さ。水戸芸術館に掲げられた「WAR IS OVER! if you want it/Love and Peace, John and Yoko」のバナーも、いつか現実になると願わずにいられない。
禅問答のような想像のゲームに始まり、どんなに辛くても肯定し続ける、痛々しいまでの意思表明へと変化してきたオノの作品。それは時代とともに歩んできたオノ自身の姿、そして私たちの姿をも写しているのだろう。想像し、行動するオノは、あくまでもこの現代、私たちとともに在るアーティストなのだと思う。