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愛知県美術館 「中西夏之展 広さと近さ――絵の姿形」/ |
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●中西夏之のペンタグラム 同じ作家のことを何度も取り上げるのは気が引けるけれども、今回も実は中西夏之展のことを話題にしようとしている。お許し願いたい。 というのも、この一月には、この作家の展覧会が異例とも言えるほどいろいろなところで開かれているからである。このような機会はめったにないことなので、注目に値すると思う。 1. 「中西夏之展 広さと近さ――絵の姿形」愛知県美術館 2002年12月20日(金)〜2003年2月23日(日) 2. 「二箇所――絵画場から絵画衝動へ――中西夏之」(東京芸術大学退官記念展)東京芸術大学大学美術館 2003年1月16日(木)〜2月2日(日) 3. 「セゾン現代美術館コレクションによる 中西夏之展」セゾンアートプログラム・ギャラリー 2003年1月7日(火)〜2月1日(土) 4. 「中西夏之展 弓形が触れて」ギャラリー21+葉 2003年1月14日(火)〜1月31日(金) 5. 東京都現代美術館常設展示 〜2月16日(日)
私は年末、名古屋で愛知県美術館での回顧展を見る機会を得たのだが――そう、これは回顧展と呼ぶにふさわしい堂々たる展覧会であった。1950年代末の「韻」連作から2002年の最新作まで、基本的には年代を追って各期の代表作を集めた展示は、見ごたえがあった。そして特に、ハイレッドセンターの時代を通じて「直接行動」に傾斜し、絵画から遠ざかるかに見えた時期をへて、再び自らの「絵画」を獲得しようと探究を重ねていた時代――連作「山頂の石蹴り」に代表される時期の作品群が、かなりの点数、まとまって見ることができたのは、一種の驚きであった。そして、もう一つの驚きは、インデックス的な絵画とも見えるこの時期の作品群にさえも、1980年代以降の白の、紫の、緑の絵画と同種の、筆触のざわめきのようなものを、画筆の先端がカンヴァスに触れて絵画が生起する瞬間の静かな昂りを、何よりも感じることができたことである。絵画を絵画として、堂々と、あくまでオーソドックスに展示すること――作家の意図か、キュレイターの意図か、おそらく両者の意が合致したところに成ったものと推察するのだが、この選択は、きわめて喜ばしい成果をあげていたと思う。 芸大美術館の展示(2)は、新作インスタレーションと芸大油画科中西ゼミの記録のようなものになるらしい。絵画の背後に秘められている作家の思索がうかがわれる貴重な機会になることだろう。セゾンアートプログラム・ギャラリー(3)は、様々な時代の中西夏之の代表作を所蔵するセゾン現代美術館のコレクションからのセレクション。ギャラリー21+葉の展覧会(4)は、1970年代末から1980年代初頭にかけて制作された作品「弓形が触れて」を中心にして新たに作家自身によって構成された展覧会であるという。いずれもひじょうに特色ある展覧会になることと期待される。 東京都現代美術館の常設展示については、以前(12月1日更新分)の本欄の拙文を参照されたい。
[みなみ ゆうすけ] |
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