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芸術の森美術館 森の美術散歩II〜芸術の森美術館コレクションから
吉崎元章[芸術の森美術館]

 
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福島/木戸英行
札幌/吉崎元章
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安井曽太郎と孫
舟越桂『雪の上の影』2002年(楠に彩色、大理石)
 美術館の顔ともいえるコレクションを形づくる作品収集。それは美術館にとって最も重要な活動のひとつでありながらも、昨今の経済事情により購入予算が大幅に削減され、あるいはゼロという話がいたるところから聞こえてくる。芸術の森美術館でも数年前から作品購入費がまったくない状態が続いている。当館のコレクションは、札幌の美術とともに国内外の近現代彫刻の流れを綴ることを目指しており、なかでも近代日本において西洋彫刻の導入と伝統のなかで展開された木彫作品もかなり揃ってきていただけに、さらなる充実が図れないのはとても残念なことである。最近は、主に美術館で開催した展覧会出品作などを中心に作家本人や遺族などから寄贈してもらうことに頼っているのが実状である。
 そうしたなか、昨年、舟越桂の《雪の上の影》という作品がコレクションに加わった。母娘のふたつの顔をもつ彼の最新作である。この作品を寄贈していただいたのが、札幌市在住の90歳を越える女性であった。本人の希望により、名前や詳しい事情を明かすことはできないが、北海道開拓のなかで苦労しながら自分を育ててくれた母親への思いを形として残したいという申し出によるものであった。歳をとるごとに、母親の自分に深い愛情を身にしみて感じ、母親を顕彰するものを残したいというのである。当初、彼女から大通公園に親仔馬の像を設置するためのお金を寄付したいという話が札幌市にあったときには、はっきりいって困惑した。しかし、よく話をうかがってみると、親仔馬像というのはヨーロッパの公園にある騎馬像のイメージに加え、たまたまテレビで競走馬の記念像設置を見て思いついたことで、また野外設置でなくとも、多くの人に見てもらえればということであったため、美術館への作品寄贈ということで話がまとまった。美術館として候補作家の作品を見てもらい、そのなかで彼女が気に入ったのが舟越桂であった。早速、作家に連絡し事情を話したところ、彼はこれまで内容まで指定された依頼を受けたことがないという。少し考えさせてほしいとのことであったが、幸いにも、親子の情愛を表現するというこの依頼を引き受けてくれた。依頼者とその母の写真も送り、想を練ってもらった。そうしてできあがったのが、寄り添った母と娘が遠くを見つめる半身像である。美術館でこの作品と初めて対面した依頼者は、「こんなに立派なものを…」と繰り返しながら、母の思い出を目に涙を浮かべながら語り続けたことがとても印象的であった。
 《雪の上の影》は、間違いなく多くの人々に愛され続ける、当館を代表する作品となることであろう。個人の思い出を芸術家の力で普遍的な作品として、多くの人々に感動を与え続けていく。これを契機にこうした寄贈が増えてくれればいいのだが…。海外では美術館への寄付は税金免除などの特典があると聞くが、日本でもそうした法的整備が進むことを望みたい。
 この作品は、現在芸術の森美術館で開催中の「森の美術散歩II 」(3月30日まで)のほか、今年全国巡回する舟越桂展の東京・栃木・旭川会場にも出品予定である。
  

会期と内容
森の美術散歩II〜芸術の森美術館コレクションから
会期:2002年12月21日(土)〜2003年3月30日(日)
料金:一般300円、高大生150円、小中生60円
会場:芸術の森美術館 札幌市南区芸術の森2丁目75
 tel.011-591-0090
休館日:月曜日、年末年始(12/29〜1/3)
(ただし、12/23(月)開館で12/24(火)休館、1/13(月)開館で1/14(火)休館)
開館時間:9:45〜17:00(入館は16:30まで)
URLhttp://www.artpark.or.jp

[よしざき もとあき]

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