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暗黒舞踏

Ankoku Butoh
更新日
2024年03月11日

土方巽を創始者とし、土方や彼の弟子たちの活動を中心とする日本の前衛的なダンスの名称。「暗黒舞踏」と呼ばれるのは主に土方本人のダンスや作品に対してであり、彼の弟子たちやその弟子から薫陶を受けた振付家・ダンサーたちによるダンスや作品については単に「舞踏」と呼ぶのが通例である。当初、土方は「暗黒舞踊」という表現も用いていた。1959年の《禁色》がその出発点とされる。ドイツの表現的なダンスに触発された硬く強く、ときには暴力的とも思われる動きや、同時代の文学者や美術作家たちから受けた刺激を反映したオブジェ的な身体、即興的な要素を持ち込んだ舞台が60年代の土方のダンスの特徴で、65年の《バラ色ダンス——澁澤さんの家の方へ》や68年の《土方巽と日本人——肉体の叛乱》などの代表作がある。70年代には繊細で弱い動きへと移行し、その試みは72年の《四季のための二十七晩》に結実した。73年以降、土方は自分自身では踊らなくなり、86年に逝去するまで白桃房など弟子の公演の振り付けや講演活動などを行なった。大野一雄や笠井叡ら60年代から活躍している作家や、麿赤兒(大駱駝艦)、天児牛大(山海塾)、和栗由紀夫(好善社)、大須賀勇(白虎社)、室伏鴻(背火)、玉野黄市(哈爾賓派)など土方の弟子たちの活動によって、80年代以降、舞踏は国内のみならず国際的な評価を得るようになった。

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参考文献

『土方巽全集』(全2巻),土方巽河、種村季弘,出書房新社,1998
『土方巽「舞踏」資料集 第1歩』,土方巽アーカイヴ編,慶應義塾大学アート・センター,2000
『〈バラ色ダンス〉のイコノロジー 土方巽を再構築する』,慶應義塾大学アート・センター編,慶應義塾大学アート・センター,2000
『肉体の叛乱 舞踏1968/存在のセミオロジー』,慶應義塾大学アート・センター編,慶應義塾大学アート・センター,2009