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カタログ・レゾネ

Catalogue Raisonné(仏)
更新日
2024年03月11日

類別全作品目録。総目録。「レゾネ」とも。ある芸術家、あるいはひとつの美術館やコレクションの全作品のデータを網羅して記した文書のこと。「レゾネ」は「論理にかなった」「理由を付した」といった意味。時代によって内容は一定でないが、今日「カタログ・レゾネ」といえば、作品図版、タイトル、制作年、素材・技法、寸法、署名の有無、研究者による解題、作品記述、さらに所蔵歴(来歴)、展覧会歴、文献歴などの詳細データを収めたものを指す。1作家のレゾネの場合、ジャンルや年代を限定して編纂されることもある。美術の書籍におけるこの語の用法は、17世紀終わりから18世紀初め頃の競売カタログにおいて始まったとされる。もとは商業的意味が強く、真贋判断の根拠として利用された。分類方法等の形式が整ってきたのは版画(絵画の複製版画)収集ブームに沸いた18世紀中頃で、個人の作品総目録への関心はこの頃から始まり19世紀後半になって一般化した。20世紀に入って写真図版が大量に掲載されるようになり、商業的利用とともに美術史研究の材料として広く利用されるようになった。

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補足情報

参考文献

『美術カタログ論 記録・記憶・言説』,島本浣,三元社,2005