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タイポロジー・フォトグラフィ

Typology Photography
更新日
2024年03月11日

同じ種類の対象を被写体とした写真を集めて、イメージ同士の差異や、複数のイメージの集積から見えてくるものを探ろうとする写真表現のこと。「タイポロジー」は「類型学」の意。ドイツの写真家、ベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻の作品が有名である。二人は1950年代末から、ドイツを始めとする欧米各国において、産業界の合理化のなかで消えてゆく運命にあった産業施設(給水塔、溶鉱炉、採掘炉、サイロ等)や、産業地帯の住宅などを撮影。被写体に均一に光の当たる曇天の日を選んで撮影を行ない、対象のフォルムやパースペクティヴ、ストーリー性を強調しない、フラットなイメージを制作した。そして、それらの写真を同一モチーフごとに集めて、グリッド上に並べて見せるなどして、『ライフ』誌に代表される「フォト・ストーリー」とは異なるかたちで、時代や歴史のドキュメントを構成してみせた。彼らの客観的かつシステム化された制作スタイルは、60年代以降、ミニマル・アートやコンセプチュアル・アートの文脈において高く評価されることとなり、90年には、ヴェネツィア・ビエンナーレの彫刻部門で賞を受けている。

補足情報

参考文献

Anonyme Skulpturen: Ein Typologie technischer Bauten,Bernd und Hilla Becher,Art Press Verlag,1970
「遠・近 ベッヒャーの地平 ドイツ現代写真」展カタログ,川崎市市民ミュージアム編,川崎市市民ミュージアム,1996