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ドライポイント

Drypoint
更新日
2024年03月11日

直刻法による凹版技法の一種。版材より硬い鋼鉄製のニードルやナイフで直接金属板に傷をつけて描画し、削りかすやまくれ(burr:バー、バール)をそのままにしてプレス機にかけて印刷する。刃を動かす方向が制限されず自由に描ける点でエングレーヴィングと異なる(ただし金属を直接彫るには高い筆圧が必要)。描線の両側にできるまくれにインクが絡まることで刷り上がりに表情のある滲みが生じるところに特徴がある。あらゆる凹版は、金属の溝に詰まったインクを刷りとるために紙の上から強い圧力をかける必要があるが、まくれはこの圧力で摩滅しやすいため、ドライポイントの効果は大量には得られない。現存する最古のドライポイントに、1480年頃ライン川中流域で活躍されたとみられる「ハウスブーフ(家事書)の画家」の作品がある。エッチングと併用されることが多く、この場合は腐蝕の後に独特のニュアンスを加えるために使われる。レンブラントはこの技法を好んで用い、デリケートなまくれなどをより忠実に表現するため輸入された高価な和紙を買い占めたという。

著者

補足情報

参考文献

『版画事典』,室伏哲郎,東京書籍,1985
『改訂版 版画の技法と表現』,町田市立国際版画美術館編,町田市立国際版画美術館,1991