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《養老天命反転地》荒川修作、マドリン・ギンズ

Site of Reversible Destiny-Yoro Park, Shusaku Arakawa and Madeline Gins
更新日
2024年03月11日

岐阜県養老町にある美術家の荒川修作とパートナーで詩人のマドリン・ギンズによる《養老天命反転地》(1995)は、メイン・パヴィリオンである「極限で似るものの家」とすり鉢状の「楕円形のフィールド」、それらを結ぶ「死なないための道」からなる公園施設である。「極限で似るものの家」の内部では、壁や天井、机やソファが、重力を無視して空間内に配置され、「楕円形のフィールド」には平坦な場所がまったくなく、「極限で似るものの家」を分割したパヴィリオンが点在する。この《養老天命反転地》で感じる錯覚、不安定な感覚とは、環境と人との関係性において人の感覚にうまくフィットしていない、つまりは、その環境に人の日常的な行動に対するアフォーダンスが備わっていないと言える。荒川は《養老天命反転地》で、あえてアフォーダンスを歪めることにより、人本来の感覚を再認識することを求め、さらには《養老天命反転地》のような感覚を日常生活でも感じることができるようにと、《三鷹天命反転住宅》(2005)、ニューヨークに《バイオスクリーブ・ハウス(Bioscleave House)》(2008)を完成させた。荒川はこのような空間に身を置くことで、新たな身体の行為や動きが生まれ、人間の未知の可能性が生まれると言い、体の外側から人間の死に向かう宿命を変えていくという宿命反転都市を目指した。

著者

補足情報

参考文献

『荒川修作の軌跡と奇跡』,塚原史,NTT出版,2009
「荒川修作+マドリン・ギンズ 死なないために 養老天命反転地」展カタログ,岐阜県美術館,1999
『現代思想』1996年8月臨時増刊号,荒川修作+マドリン・ギンズ,青土社