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路上観察学会

Rojo Kansatsu Gakkai
更新日
2024年03月11日

路上を観察し、特定のものに価値を見出した集団。世間が存在を意識しなかったものを対象とし、学問的に調査・発表する。『路上観察学入門』の出版に合わせて1986年に結成された団体である。主な活動は、芸術家・赤瀬川原平らによる「トマソン」の観察である。機能を失った、もしくはもともと無用な、純粋なモノに価値を見出す姿勢は、路上観察の基礎となった。それを学問に高めたのが建築史家の藤森照信である。彼は机上の学問に限界を感じ、フィールドワークに新たな可能性を見出した。会員たちは考現学の影響を受けており、活動は広い分野にわたる。なかでもマンホールの蓋を観察・記録していた林丈二と、解体される建物のカケラを集めていた一木努は、対象の新奇性や、圧倒的な数をコレクションした点で特筆すべきである。それぞれ『マンホールのふた(日本篇)』(1984)の出版と「建築の忘れがたみ」展(1985)の開催により一般に公開された。またほかに、南伸坊『ハリガミ考現学』(1990)、森伸之「女子高生制服ウォッチング」(『路上観察学入門』に収録)などの成果がある。これら個々の活動が集まることで、新しい認識論は強度を増し、追随する活動が起こった。なお、自らを学会と名乗っているが、本来的な学術組織ではない点に留意したい。彼らの活動は有用性を問わず、遊びや笑いを前提としており、自らの命名にもトマソンの観察と同様に本来的な意味からのズレを楽しむ姿勢が見て取れる。

補足情報

参考文献

『路上観察学入門』,赤瀬川原平ほか編,筑摩書房,1986
『超芸術トマソン』,赤瀬川原平,筑摩書房,1987
『1+1』No.44,「笑う路上観察学会のまなざし」,南後由和,INAX出版,2006