バックナンバー
2021年09月15日号のバックナンバー
フォーカス
【ビサヤ】時とともに這い進む──フィリピン、VIVA-ExCon 2020のキュラトリアルの試み
[2021年09月15日号(平野真弓)]
「ビサヤ諸島ビジュアル・アーツの展覧会と会議(Visayas Islands Visual Arts Exhibition and Conference、以下、 VIVA-ExCon)」は、フィリピンで1990年から開催されているアーティスト主導のビエンナーレだ。フィリピン中部、ルソン島とミンダナオ島の間に位置するビサヤ地方で活動するアーティストたちがバトンをつなぎ、開催地を移動しながら継続してきた。各回、主催・企画チームが交代し、それぞれの場所性を反映する多様な試みが行なわれてきたが、展覧会と会議という基本構成は初回から維持されている。2年に一度、ビサヤ地方のアーティストやカルチュラルワーカーが一堂に会する祝祭の場でもある。
その30周年記念となった2020年は、発足の地、ネグロス島バコロド市での開催に向けて準備が進められてきたのだが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて当初の計画を大幅に再調整しての実施となった。「ゆっくりと段階を踏みながら展開する」というイメージのもとに会期を1年に引き延ばし、オンラインプラットフォームをメイン会場として実施された。本稿では本フェスティバルの歴史的背景を参照しながら、今回のVIVA-ExCon 2020の展覧会づくりの方法について考察したい。
キュレーターズノート
コラボレーション(Collaboration)とコレクティブ(Collective)のC
[2021年09月15日号(レオナルド・バルトロメウス)]
新型コロナウイルス感染症が日本で猛威を振るい始める少し前、ひとりのキュレーターがインドネシアから山口へと移り住んだ。インドネシアのジャカルタを拠点に活動するアーティスト・コレクティブ、ルアンルパの一員としても活動していたレオナルド・バルトロメウスである。現在、彼は山口情報芸術センター[YCAM]のキュレーターとして、地域社会における文化施設のあり方について新しい視座をもたらすための取り組みに従事している。彼の視点から見たコロナ下での暮らしや文化施設の役割、そしてこれから始めるプロジェクト「オルタナティブ・エデュケーション」について紹介したい。
泡と消えた被災地の夢
[2021年09月15日号(山内宏泰)]
復興事業の象徴とも言える気仙沼大島大橋、三陸自動車道、気仙沼湾横断橋の開通。そして東京2020オリンピックの開催、気仙沼大島を舞台とする連ドラの放映。すべてが気仙沼の新たな船出にとって強い追い風となるはずだった。しかし……地域住民がイメージしていた輝く未来、希望はコロナ禍の発生という大誤算によって泡と消えた。
本稿では「震災復興事業」の完了とコロナ禍が重なる宮城県気仙沼市の現在、東日本大震災被災地10年目の日常をレポートする。
トピックス
スタッフエントランスから入るミュージアム(5)美術図書室司書──もうひとつの収蔵品の案内人
[2021年09月15日号(岩田郁子/坂口千秋)]
東京都現代美術館(以下、MOT)の美術図書室に行かれたことはあるだろうか。都内の美術館附属の図書室のなかでは歴史が古く、2019年のリニューアル・オープン時には、スタイリッシュな内装に生まれ変わった。さて、美術館の図書室とは一般の公共図書館とどのように違うのだろうか。バックヤードをたずねてみると、図書室はまさに美術館の内臓のようなところだった。スタッフエントランスからミュージアムの奥に入り、知られざる「アートの仕事人」に出会うシリーズ、第5回目は美術館の図書室司書の仕事を紹介します。(artscape編集部)