現代美術用語辞典 1.0

アンフォルメル

Informel
2009年01月15日掲載

宮川淳が後に初期の代表的論文「アンフォルメル以降」(1963)で回顧したように、この動向は第二次大戦後のヨーロッパでいち早く強い影響力をふるった。そもそものきっかけは、終戦直後、J・フォートリエ、J・デュビュッフェ、ヴォルスら“非職業的”画家の激しい感情表現に注目し、そこにキュビスム以降の展開を予見した批評家M・タピエが、52年に彼らを中心とした非具象絵画の美術運動を組織する際に、「非公式の、非定形の」という意味のこのフランス語をあてたことにある(もっとも、タピエはこの名に「もうひとつの芸術」という含意を持たせたようだ)。活動拠点がフランスだったとはいえ、この運動には当初はJ・ポロック、W・デ・クーニング、後にはS・フランシス、L・フォンタナ、P・アレシンスキーらも参加。また当時パリ在住の今井俊満や堂本尚郎もこの運動の一員で、57年には東京で“凱旋展”が開催されるなど、極めてコスモポリタンな性格をもっていた。なお別に「タシスム」と称されることもあるが、厳密にはそれも「アンフォルメル」の一形態である。

[執筆者:暮沢剛巳]

現代美術用語辞典 2.0

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