現代美術用語辞典 1.0

グラッタージュ

Grattage
2009年01月15日掲載

本来は、「擦り取ること。引っ掻くこと」の意。シュルレアリスム運動に参加したM・エルンストがフロッタージュの原理を油彩画に応用した技法を指す。何種類かの絵の具をカンヴァスに層状に塗り重ね、絵の具がまだ乾かないうちに、それを凹凸のある素材の上にのせる。この状態のままパレットナイフで上塗りの層を削ると、地塗りの層が現われるとともに素材の肌理が写し出される。ここに浮かび上がってくるイメージを、輪郭線や絵の具を塗り込むことによって明確にする。主にエルンスト自身によって用いられ、《10万羽の鳩に》(1925-26)、《流民の群れ》(1927)、《大きな森》(1927)、《雪の花》(1927)、《貝殻の花》(1927)、などの代表作を生んだ。この手法においては、フロッタージュ同様、擦り取る素材との関係において偶然が支配する。また、写し取られた肌理は思いもかけないイメージを呼び起こす。作者の理性や意図を含めた、一切の意識的なものからの逸脱を目指したA・ブルトンやエルンストは、このやり方も、意識を超えたイメージ、潜在意識や一種の幻覚的イメージを喚起しうるものとして高く評価した。

[執筆者:中島恵]

現代美術用語辞典 2.0

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