2020年10月15日号
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現代美術用語辞典 1.0

グラフィック/グラフィズム

Graphic / Graphism
2009年01月15日掲載

英語のグラフィックの語源はラテン語の「Graphicus」、ギリシア語の「Graphikos」で「書写、描画、図」という意味。したがって広義には、グラフィック(・アート)とは平面上に図像をあらわすすべての技術、すなわち絵画や写真をも含む平面的な視覚芸術全体のことになるが、一般的には版画やグラフィック・デザインなどの印刷芸術を指すことが多い。年代のはっきりしている印刷芸術の最初の例は、敦煌で発見された9世紀後半の木版画である。ヨーロッパではもっと遅く、15世紀前半になってようやく紙に印刷された木版画や銅版画が出現した。しかし、15世紀半ばにグーテンベルグによって活版印刷が考案されると、木版画や銅版画は挿画として活版印刷と組み合わされて欧州全土に広まり、19世紀に入るとリトグラフや写真術の発明にともなって、現在のグラフィック・アートの原型がほぼ完成した。日本においては、東大寺正倉院の《百万塔陀羅尼》(8世紀中期)が現存する世界最古の印刷物として有名なように、木版画は早くより中国から伝来し、18世紀後半には浮世絵版画の黄金期を迎えている。以上が印刷芸術の簡単な歴史だが、グラフィック・アートの本質を複数性に求めるとすれば、現代においては、印刷芸術のみならず、ビデオ、フィルム、デジタル・データなどによる視覚・映像表現をも視野に入れた概念の拡張が生じていると言えるだろう。

[執筆者:木戸英行]

現代美術用語辞典 2.0

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