現代美術用語辞典 1.0
グラフィティ・アート
Graffiti Art
2009年01月15日掲載
イタリア語で落書きを意味する「グラフィト graffito」の複数形で、壁面に落書きされた字やイメージを指すグラフィティを、表現手段として選択した美術。第二次大戦後に平面と現前性、言語と行為の媒体としてC・トゥオンブリーやA・タピエス、J・デュビュッフェらによって取り上げられだしたグラフィティは、1970年代になるとスプレー塗料の普及とともに地下鉄や都市の公共空間に氾濫する。それらの多くは無名のティーンエイジャーによる風刺イラストやデフォルメされた自身の名(タッグと呼ばれる)であったが、1975年にはグラフィティ・アーティスト同盟が結成され、ニューヨークのアーティスツ・スペースで展覧会が開かれた。オルタナティヴ・スペース等によるサポートを得たグラフィティはK・ヘリングやJ=M・バスキアに至って流行の様式となる。1983年にはロッテルダムのボイマンス美術館で展覧会が開催され、その芸術性や革命的真偽を問う論争が活発に展開した。グラフィティ・アートは都市から展示室に移行したことで80年代中旬には時代遅れの様式となったとされるが、現在のグラフィティはすでに「アート」から都市風景への回帰を果たしているようにみえる。
[執筆者:三本松倫代]