現代美術用語辞典 1.0

インストラクション・アート

Instruction Art
2009年01月15日掲載

「指示する芸術」。観客や作家の代行者に対して、特定の行為を指示する作品の総称。裏を返せば、観客や代行者がその指示を遂行しない限り、作品はけっして完成しない。観客の参加によって作品が成立するという点では、A・カプローらが1960年前後に提唱した環境芸術や、近年のコンピュータ・テクノロジーを活用したインタラクティヴ・アートなどと同様だが、「フルクサス」に由来するインストラクション・アートの場合、その「指示」の内容は「流動」や「変化」という側面と一層強く結びつけられる。1960年代、オノ・ヨーコらの活躍(夫であるジョン・レノンの「IMAGINE」が、インストラクション・アートの発想に基づいているというエピソードも存在する)によって一時的に注目されたのもつかの間、長らく他の類義語に埋もれてしまっていたインストラクション・アートだが、1990年代のF・ゴンザレス=トレスの登場によって、あらためて注目を集めることになった。彼の代表作である《キャンディ彫刻》のシリーズは、観客のささやかな参加を促すインストラクション・アートの成立形態が、アートと日常性とを厳然と区別しようとするモダニズムの規範に対する有効な批判足りうることを示している。

[執筆者:暮沢剛巳]

現代美術用語辞典 2.0

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