現代美術用語辞典 1.0
グリニッジ・ヴィレッジ
Greenwich Village
2009年01月15日掲載
ニューヨーク市マンハッタン島の下町で、ワシントン・スクエアを中心とした、ブロードウェイ西側の14丁目とHouston通りに挟まれた区画。第一次世界大戦直後から、低家賃と町並みにひかれて芸術家や作家が住みはじめる。街には古本屋、骨董店、小劇場が軒をそろえ、知的・芸術的自由の代名詞となる「ヴィレッジ」の素地が作られた。オフ・ブロードウェイの歴史は1930年代にユージン・オニールがここで実験的な作品を上演したことに始まり、50年代後半にはジャズのメッカとして名を馳せた。また、ヴィレッジはアメリカ美術の独自性を決定づけたニューヨーク・スクール揺籃の地でもある。30年代後半からA・ゴーキーを筆頭に、J・ポロック、F・クライン、W・デ・クーニング、M・ロスコといった作家たちがヴィレッジ周辺にアトリエを構え、互いに影響を与えながら制作を行なった。48年、8丁目に彼らが設立した「クラブ」には、H・ローゼンバーグ、J・ケージなどが参加し、時にはA・ギンズバーグやJ・ケルアックが訪れた。51年に空き家を借りて開催されたグループ展は大きな反響を呼ぶ。しかし60年代、作家たちの社会的地位が高まるにつれ、そのボヘミアン的結束は崩壊し、同時に家賃の高騰によって新進の作家たちが南のソーホー地区やイースト・ヴィレッジに移った結果、グリニッジ・ヴィレッジは急速にその魅力を失った。
[執筆者:岸弥生]