現代美術用語辞典 1.0
グループ・マテリアル
Group Material
2009年01月15日掲載
グループ・マテリアルは非アーティストを含むコラボレーション・チームとして結成され、ニューヨークに設けたギャラリー「グループ・マテリアル」を拠点として1979年に活動を開始する。アートがソーシャル・コミュニケーションや政治的変革に影響力をもつべきであるという共通の信念をもって集まった15人のメンバーによって構成され、住民の持参したものによって構成された展覧会「The People's Choice」などが企画される。彼らは経済原理が支配する現状の美術界から距離をおき、名ばかりのオルタナティヴ・スペースとも一線を画すギャラリーを目指し、主にコミュニティとのインタラクティヴィティを通して展覧会というメディアそのものの表現的可能性を模索した。チームはすぐに解散を迎えるが、その理念は引き続き結成されたグループにも継承され、1981年に結成当初からグループの指導的立場にあった T・ロリンズを中心に、J・オルト、M・マクローラン、D・アシュフォード、F・ゴンザレス=トレスによる新たな活動が開始される。彼らの活動の特徴は、市民グループや地域住民による作品やアーティストの作品の併置、また日常的オブジェとアート作品の混在等、当初からグループが実行してきた方法や、テキストや商業広告などを利用して美術館の展示を脱構築したうえで展示に政治性を回復させる試みなどにみられ、1989年カリフォルニア大学美術館で行なわれた彼らの代表的活動のひとつである「AIDS Timeline」もその手法を用いており、エイズに関係する作品、日用品、テキスト、広告を広く収集して時系列的に配置する展示を行なっている。この時同時に建物の正面に設置された「オピニオン・ウォール」には住民の声が載せられ、コミュニティのエイズ認知レヴェルを反映させた。これは5番街のバスの広告スペースを使ったプロジェクト「M-5」や、赤と黄色の「プロパガンダ・ポスター」を非合法にS. Kleinビルの外壁に貼付し、そこをゲリラ的に「オピニオン・ウォール」に転換した「DaZiBaos」などの過去の作品にも適応された手法である。
[執筆者:宮川暁子]